ヒルズに遊ぶスクール水着の少女たち “要注意作家"が切り出す日本の社会

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《考えない人》2012年 Courtesy:Mizuma Art Gallery

その向かいに鎮座する《考えない人》は、会田のアバターでもある「おにぎり仮面」というキャラクターだ。黄金に輝く排泄物の上に座っている。ロダンの《考える人》と《弥勒菩薩半跏像》が下敷きになっている。

さて、オープニングの会見に現れた会田は、タイトルの「天才でごめんなさい」について、こう説明した。

「リトアニアのバーで飲んでいるときにパッと思いついた。まじめっぽいことを言えば、僕はアーティストの対極にある、職人的なものにあこがれたはずなのに、気がつけばやっぱり普通にアーティストで、わがままにやっていたな、という反省が込められている。作品は勘とノリで作っていて、腰を落ち着けて、ロジカルに考えてできていなくて……」

見世物小屋のような、レジャーにしたい

自分の絵には勢いがなく、村上隆のような戦略性もない、という会田だが、だからこそ、ひとくくりにできない多様な作品を生み続けられるのかもしれない。

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原発関連のツイッターのつぶやきを壁一面に貼りつけた《モニュメント・フォー・ナッシングⅣ》の前に立つ会田誠

参加希望者を募り、使用済みの段ボールで「ゴシック教会の祭壇レリーフ彫刻のようなもの」を共同制作するプロジェクト「モニュメント・フォー・ナッシングⅡ」も進行中だ。ヨーロッパの職人が時間をかけて作った石造りの彫刻を、安価な段ボールで再現してみせる。

自分の作品はリビングルームに飾られるより、通りすぎながら見てもらうものだと、会田はいう。

「縁日のときの見世物小屋みたいに、お化け屋敷を入口から巡っていって、ああ面白かったと言って出てくる。そういうレジャーというか、今日はこれを見に行こうと、お金を払って入るものとして作りたいんですよね」

その言葉のとおり、次々に現れる作品の前でクスッと笑い、いろいろなことを考えさせられ、最後は「ああ面白かった」と出てこられる展覧会だ。

 


「会田誠展:天才でごめんなさい」開催中~2013年3月31日
森美術館
東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53階
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00~22:00(火曜は17:00まで、1月1日は22:00まで)
会期中無休
一般1500円

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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