教育の大転換「高大接続」を知っていますか? 一大構想とその課題を丸ごと解説

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日本では、大学の教員が高校で出前授業をやることがあるが、それとは根本的に違う。APは国が認める体系化されたカリキュラムであり、高校の教員が教えることができる。

日本と米国の決定的な違いとは?

日本より何歩も先をゆく米国の教育界。いったいなぜここまで違うのか。

筆者は、さまざまな利害関係者が一体となって、教育課題に取り組んでいるか否かという点がひとつの大きな理由だと考えている。

その象徴的存在が、米国にあるNACAC(National Association for College Admission Counseling)という巨大な教育組織だ。この組織には、世界各国の高校の進路カウンセラー、大学のアドミッションオフィサー、教育関係の企業人など、立場の異なるさまざまな関係者が参加している。設立は1937年で、80年も前から行われている。つい最近、高校と大学の連携に動き始めたばかりで、同種の団体は存在しない日本人からすると驚くべきことだ。

NACACは毎年、大規模のカンファレンスを開いて、教育現場の課題を参加者全員で共有している。そこでは高校・大学・企業それぞれの立場で得られた経験を活用し、米国全土の教育を、地域の垣根、公教育と民間教育との垣根を越えて、全員参加で改革・改善する機会を設けている。高大接続のための機関だと言ってもいいだろう。

直近の総会はサンディエゴで行われ、7000名を超える会員が一堂に会した。ちなみに、その総会に参加した日本人は、私の部下ただ1人だった。

NACACカンファレンス2015の会場は米カリフォルニア州サンディエゴ。2016年はオハイオ州コロンバスで行われる

毎年、NACACでは、大学と高校の教育に関するさまざまなトピックが扱われる。たとえば、高校での進路指導をどのように行うべきか、低所得層の大学進学をどのように支援するか、学生獲得のリクルーティング活動をどう改善するか、近年の学生の大学への進学状況がどう変化してきているのか、留学生の受け入れ体制をどのように整えていくのか、などだ。高校の課題を高校関係者だけで、大学の課題を大学関係者だけで話し合う、というのとはまったく違い、それぞれの課題を共有しあうという意識が高いのだ。

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