教育の大転換「高大接続」を知っていますか? 一大構想とその課題を丸ごと解説

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こうしたさまざまなトピックの中、昨年、特に注目を集めていたテーマのひとつが、College Board(日本で言うところの大学入試センター)と無料教育サイト・カーンアカデミーが連携した無償の学習コンテンツサービス“Free SAT Practice Resource”だ。

そもそも米国版の統一テスト「SAT」は、日本のように知識量を試すようなテストではなく、論理的思考力、数的処理能力などを見る試験として、これまでも一定の評価を得ながら、大学入試に必須の共通試験として活用されてきた。

しかし米国ではこれまで、生まれ育った環境の違いがSATの成績を左右してしまうことが問題と認識されており、それを解決しきれていなかった。チューターを雇って試験対策を行える裕福な家庭のほうが、そうでない家庭よりも試験結果がよくなるという現実だ。

長年にわたって、暗黙の了解事項となっていたこの問題を初めて解決し得るものとしてCollege Boardが提示したのが、カーンアカデミーとのプロジェクト。つまり、学習コンテンツの無料化だった。

ここでは、SATの問題例をオンラインで紹介し、カーンアカデミーが作成したテスト対策コンテンツを、誰でも無料で受講でき、アカウントを作成すれば自分の学習の進捗状況を把握することもできる。オンラインでSATの模擬試験を受けることもできる。

高大接続の実現のために学ぶべきこと

このような教育全体の大きなテーマの議論で白熱するNACAC。その先進的な内容には驚くばかりだが、それはやはり、行政、高校、大学、民間が、垣根を設けずに議論し、解決していく姿勢が共有されているからだろう。

ところが、日本にはそうした場がない。仮に、日本にもNACACのようなコミュニティがあれば、改革のステークホルダーが一堂に会して、利害を超えて自由に議論を交わし、解決への道筋を話し合っていくことがもっとスムーズ、迅速にできるはずだ。国の審議会だけでは到底足りない。

貧富の差を乗り越えるための教育コンテンツの無償化など、どんどん先をゆく米国と、高校と大学の連携が必要というスタート地点に立ったばかりの日本。この改革を成功させるためには、日本も米国の取り組みからもっと学ぶべきではないだろうか。

相川 秀希 日本アクティブラーニング協会 理事長

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あいかわ ひでき / Hideki Aikawa

早稲田塾創業者。日本アクティブラーニング協会理事長。株式会社サマデイCEO。株式会社アドミッションズオフィスCEO。教育革新のための情報発信メディア EducationTomorrow編集人。自社開発のポートフォリオシステム「Feelnote」が文部科学省/JASSOの官民協働海外留学創出プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」に採用。オリジナルのアクティブラーニング・ワークショップが、各種教育機関をはじめ、大手テーマパーク・金融機関・コンビニエンスストア・人材開発コンサルティング企業などの主要な人材開発研修として取り入れられている。ロックフェラー財団 ACC(Asian Cultural Council)メンバーも務めている。著書に『日本一受けたい授業』(水曜社)、『頭が良くなる青ペン書きなぐり勉強法』(KADOKAWA)、『超一流はアクティブラーニングを、やっている。』(東京書籍)がある。

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