支援学級・学校へ押し出される子どもたち 発達障害に寄り添って小学校を「壁」にしない

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「うちの子流~発達障害と生きる」というブログで発達障害にまつわる情報を発信しているnanaioさん(48)には、それぞれ異なるタイプの発達障害と診断された長女(小5)と長男(小3)がいる。長女は通常学級に、長男は支援学級に在籍。通常学級に通う長女のことは、親と担任の先生、特別支援コーディネーターの3者が学校で定期的に集まり、「ケース会議」を開いて対応策を話し合っている。「ケース会議」は保護者抜きで行うことも多いが、nanaioさんはあえて保護者も含めてもらった。

褒めの見える化で改善

長女は漢字一つを書くのにも、人一倍時間がかかった。字は汚く、繰り返す作業が苦手。学校では、きれいに書くことを義務に感じないよう、きれいに書けたときに星マークをつけてためていく、「褒め」の見える化方式を導入してもらった。先生の提案もあり、長女だけ特別扱いにならないよう、星マークをためる方式を、クラス全員にも導入することになった。

長女は叱られ続けた頃とは打って変わり、「今日は星印を◯個もらえた」と報告してくるように。小3から続けてもらい、最近では文字がきれいになった。

神奈川県茅ケ崎市で学習障害の支援活動「ことばと読み書き すーふ」を実践する言語聴覚士の沖村可奈子さんは言う。

「ひとりの子に特別な対応をしてもらう際、クラスでその子が孤立しないようにする配慮が必要。その子の段差を小さくすることが、クラスみんなにとってもいいことにつながるよう、先生がコーディネート力を発揮してくれるとうまくいきます」

発達障害・グレーゾーンの3人の子どもを育ててきた大場美鈴さん(41)は、自身の経験から、「学校との交渉は、粘り強く」とアドバイスする。

小5の長男は、発達障害の一つの「自閉症スペクトラム」の診断と、ADHD、LDの傾向があり、漢字の書き取りや板書をノートに写すことが苦手だ。小4の頃から学習の内容が複雑になり、家庭で補う努力だけでは乗りきれなくなった。そこで4月から支援学級に転籍。「iPad」を学校に持ち込んで、学習の補助道具として利用するようになった。

iPadの導入は大場さんからの提案だった。板書を写すことができない時にカメラ機能を使える、うっかり防止にリマインダーを使える、検索できる漢字アプリなどを駆使すれば、確認作業の時間が短縮できる分、高学年ならではの難しい課題に集中して取り組める……とメリットがいくつも浮かんだ。

ただし長男が通う公立小では導入の前例がなかったため、まずは希望を何度となく学校へ伝えた。そのうち、特別支援コーディネーターの先生も、メディア導入の先進事例を調べて前向きに検討してくれた。話し合いの席では、大場さんは実際に導入した場合の利点をアプリを使って見せ、「視覚的に、具体的に」学校側に示し、最終的に学校の理解を得ることができた。

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