三菱自動車を悩ます、重すぎる不正の「代償」 顧客補償だけで1000億円規模も

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軽4車種の販売再開には国交省による再認証が必要だ。同省は5月2日から軽4車種の燃費を再試験し、6月中に新たな燃費性能値を公表する。他の9車種も再試験を行う予定。

石井啓一国交相は28日の会見で、三菱自の不正に厳しい姿勢を示し、生産や販売に必要な型式指定を維持するかについて「全容が解明された上で判断したい」と述べた。同社は第三者による調査報告を3カ月後に公表予定で、早ければ7月にも販売が再開できそうだが、同省の対応次第でさらに先送りになる恐れもある。

不正対象車の買い取りを求める声もある。石井国交相も22日の会見で、同社に買い取りを含めた顧客への「誠実な対応」を求めた。ディーゼル車の排ガス不正問題を起こした独フォルクスワーゲン<VOWG_p.DE>が米当局と最大約50万台の買い取りに応じることで米当局と合意したと21日発表しており、三菱自にも同様の対応が求められれば多額の費用が生じる。

支払い能力には余地、補償総額は不透明  

三菱自は現預金(3月末時点で約4600億円)などから補償金を支払う予定。27日会見した田畑豊常務は「一般的に必要な運転資金は売上高の1カ月分(前期では単純計算で約1900億円)」と説明、差し引き約2700億円が補償の原資になるとみられる。  

3月末の自己資本比率は48%と高く、同常務は「この2―3年で財務の健全性は大幅に強化されている」と指摘。有利子負債も300億円以下で「財務体質は強い」と述べた。金融機関にも、万が一の場合は「必要な資金調達をお願いすると伝えている」といい、支払い能力の余地を示した。だが、相川哲郎社長が「どのくらいかかるか残念ながら全体感がつかめていない」と話すなど補償総額の規模はまだ不透明だ。

前期営業利益の大半を稼いだ海外販売に影響が及べば打撃だが、今のところその情報は「来ていない」(相川社長)。同社が13―17年型の米国販売車に不正はないと27日発表したこともあり、現時点で米国での影響を懸念する声は少ない。ただ、国内での受注は不正公表後に半減しており、今後、不正の代償はさまざまな形で同社の経営を圧迫するとみられる。

 

(白木真紀、田実直美 編集:内田慎一)

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