総務省が値上げを指導?携帯販売はカオスだ 実質ゼロ円は健在、ユーザー不在の通信行政

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4月中旬。大阪・門真市のパナソニック本社にほど近いソフトバンクショップには「最大58.3万円大還元」のポスターが貼られていた(撮影:梅谷秀司)

昨年、安倍晋三首相の指示で始まった、総務省による携帯料金値下げの有識者会議。値下げを目的に行われた議論だったが、今はなぜか総務省による「値上げ」の指導が行われている。まさにカオス。なぜこうなってしまったのか。

4月5日、総務省はNTTドコモとソフトバンクに対し行政指導を行った。15日にはKDDIに口頭注意を実施。各社とも、行き過ぎた料金の値引きがあったとして、販売の是正を要請したものだ。

総務省は3月25日に、有識者会議でまとめた「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を公表(適用は4月1日)。ガイドラインが規制したのは、毎月の割引によって端末代金が著しく安くなる「行き過ぎた端末購入の補助」。割賦で支払う端末代金分を月々の通信料から割引する「実質ゼロ円」(2年間利用すれば端末をタダで買ったことになる)が代表例だ。

4月1日にはオンラインや直営店の直販価格について、携帯3社に報告を求め、4月5日には、4月1日~7日における販売奨励金(携帯会社が販売代理店に支払う)の報告を追加で求めていた。報告によると、販売価格はソフトバンクが多くの機種で実質ゼロ円を下回り、ドコモは実質648円、KDDIは1万0800円、一部の店舗では実質ゼロ円販売をしていた。

ソフトバンクは総務省にかみついたが…

各社はどのように販売していたのか。まずはソフトバンクだ。電話番号を変えずに携帯会社を変えるMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)向けの「乗り換え割パワーアップキャンペーン」を4月1日から実施した。

従来の「のりかえ割」の月々432円(24カ月間)に加え、一人で乗り換えると450円、家族で乗り換えると家族全員に900円の割引額が上乗せされるため、多くの機種で実質ゼロ円を下回っていた。総務省は4月5日、宮内謙社長に宛てた要請書の中で「可及的速やかに是正し、その結果を書面により総務省に報告すること」とした。

かつて業界の価格破壊を主導したソフトバンク、最近はすっかりおとなしくなってしまった(撮影:梅谷秀司)

ソフトバンクは同日にリリースを公表。「業界首位のドコモが機種変更とMNPの端末代金を実質数百円程度と低く設定しているため、スイッチングコスト(解約料や転出手数料、および新規契約事務手数料。約1万5000円)を考えると、ソフトバンクは実質ゼロ円を下回らなければ勝負にならない」という主張を展開した。

「ソフトバンクが総務省に反論した」と一部メディアは色めき立った。だが結局、同社は行政指導の10日後、4月15日までにキャンペーンを早々に終了した。

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