総務省が値上げを指導?携帯販売はカオスだ 実質ゼロ円は健在、ユーザー不在の通信行政

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一方のドコモは、iPhoneの新機種「SE」(16ギガバイト)について、ガラケーからLTEスマホへの契約変更で、機種変・MNPとも実質648円であることが総務省に問題視された。ドコモは3月25日に、5月末までのキャンペーンで実質ゼロ円としたが、総務省の指摘を受けて3月28日に実質648円に改めていた。今回の行政指導はそれもダメということだ。

ただ、ドコモは4月27日現在、実質648円を改めておらず、機種変とMNPの料金に差をつけていない。なぜか。総務省の要請文を比較すると、ソフトバンクには「可及的速やかに是正」することを求めているのに対し、ドコモには「速やかに適正化を図ること」とある。「可及的」の文言がないため、ドコモは急がなくてよいと解釈しているのだ。対応については検討中で、結論を出す時期も未定だ。

ドコモは昨年の有識者会議における議論から、「割引額の適正化は徐々に行うものと考えていた」(経営企画部料金制度室長の田畑智也氏)という。しかし、総務省の考えるスピードとは乖離があったようだ。「スピードが遅くて総務省にご指導をいただいた。これからは価格競争ではなく、サービスの競争をやっていきたい」と田端室長は神妙に話す。

結局、いくらなら適正な価格なのか?

KDDIに至っては、総務省の対応は謎めいている。同社の端末価格は実質1万0800円(月450円×24ヶ月)だった。一部の販売代理店で、販売奨励金を原資として、実質ゼロ円で販売していることが判明したため、4月1日に即日、実質ゼロ円をとりやめていた。にもかかわらず、15日に口頭注意を受けたのだ。

「KDDIだけ口頭注意だけで済んだ」という見方もできるが、同社にしてみれば「なぜ、やめてから半月後に注意を受けなければならないのか」と不満が残る。

KDDIは口頭注意だけで済んだが、不満は残った(撮影:梅谷秀司)

一体、いくらならばお咎めなしなのか。総務省は、妥当な端末価格について明言を避け続けている。それは、総務省が具体的な価格に言及した途端に「官製談合」の疑いを持たれ、公正取引委員会に対して言い逃れできなくなるからだ。

携帯3社は総務省の監督を受け、行政指導をされる立場にある。総務省は「過度な端末購入補助(割引)に当たるかどうかは市場環境に応じて変わる」としているため、3社は今後も「端末の下値はいくらなのか」を意識しながら、割引額を絶えず見直す必要がある。4月にお咎めなしだったからといって、5月もそうである保障はないのだ。

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