高島屋がニトリをテナントに取り込んだ理由 木本茂社長に百貨店事業の巻き返し策を聞く

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「消費者は可処分所得が減るなかで、余分なものを買わなくなっている」と木本茂社長(撮影:梅谷秀司)
老舗百貨店の高島屋が、厳しい戦いを強いられている。2016年2月期の業績は4期連続で増収増益を確保したものの、会社計画には達しなかった。グループ傘下のショッピングセンター事業やカード事業が収益を牽引したものの、主力の百貨店事業の営業利益は前期比10.7%減少の114億円と苦しい。
現在、百貨店事業は、インバウンド向け免税売り上げや富裕層向けの外商事業に依存している。ショッピングセンターなどとの競合が激しい地方郊外店を中心に、中間層の客足が戻らない。百貨店に中間層を呼び戻すための戦略はあるのか。木本茂社長に聞いた。

 

――2016年2月期は増収増益を維持したが、計画値には届かなかった。主力の百貨店事業は前期比で10%減益と、楽観視できない状況だ。

百貨店事業は想定以上に伸び悩んだ。国内百貨店は、通期で前期比1.4%増収。ただ、この数字にはカラクリがあって、インバウンド需要の寄与が大きい。国内の高島屋は、前期比で100億円の増収だが、インバウンドの増収分が150億円以上ある。それを除くと50億円の減収。地方郊外型の店舗を中心に前年を割っている。日本のお客様を相手にした商売は、必ずしも力強くないというわけだ。

さらに細分化してみると、富裕層と中間層にも違いがある。年間100万円以上お買い上げいただける客を富裕層、それ以下の層を中間層と呼ぶとすれば、富裕層が前9~2月期は4.3%増収で、中間層は2%の減収となる。

 

客の引っ張り合いになっている

――国内中間層の"百貨店離れ"が進んでいるということか。

離れていっているということではなく、戻りが遅いということ。2014年に消費増税があったので、本来はベア(基本給の底上げ)があって然るべきなのだが、その幅も小さくなっている。消費者は可処分所得が減るなかで、余分なものを買わなくなっている。

――地方郊外型店では大型ショッピングモールが脅威となっている。

鳥取の米子、岡山などの地方店は、利益的に大変厳しい。近くに大型のショッピングモールが出てきて、客の引っ張り合いになっている。去年の12月には、立川店のそばに「ららぽーと」が、今年に入ってからも、大阪の堺店から車で5分の距離には「イオン」ができた。

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