中国のおむつ市場「激変」、花王がECで席巻 転売騒動の裏には日本製への圧倒的人気が

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アリババの越境EC「天猫国際」で、日本製のおむつが爆買いされている

2015年11月初旬。中国で11日の「独身の日」に行われる、EC(電子商取引)での巨大セールを前に、花王は対応に追われていた。「『メリーズ』をいくらで売るか教えてくれ」と、転売業者らしい中国人からの問い合わせもあった。

中国の転売業者は紙おむつのメリーズを、日本の店頭にて1パック約1500円で買い占め、EC上にて正規輸出品より50元程度安い、約100元(日本円で約1750円)で転売。元高円安も後押しし利益を得ていた。こうした転売は2013年ごろから本格化しており、一時は中国で流通する正規品の倍の量まで、転売品が出回っていたという。転売に業を煮やしていた花王だが、独身の日の直前、アリババの越境ECサイト「天猫(天モール)国際」に初出店した。天猫国際とは中国で4億人以上が利用するアリババグループのECの海外業者版。需要拡大に応えるべく、栃木や愛媛工場を増強、2014年には国内3カ所目となる酒田工場(山形)を新設し、品薄改善に努めてきた。

シェアを伸ばす花王「メリーズ」

海外業者に限られる越境ECには利点が大きい。中国政府の指定した保税区の倉庫から出荷されるため、一般的な輸入品より税率の低い行郵税のみで済むからだ。花王の場合、標準価格158元をセールとして138元で販売。一晩で約2億円を売り切り、転売業者に大打撃となった。

転売騒動の背景には、中国市場における、日本製の紙おむつの人気ぶりがある。

失速する「パンパース」、躍進の「メリーズ」

もともとは1997年に参入した米P&Gの「パンパース」が席巻していた中国の紙おむつ市場。低価格が武器だったが、全体のパイが2009年の168億元(約3000億円)から、2015年には457億元(約8000億円)まで膨らんでいく中、逆に同社はシェアを約43%から約37%へと落としてしまった。

逆風の原因は高価な分、高品質な日本製品ブームだ。開拓者だったP&Gの間隙を縫って台頭したのが日本メーカー。2000年にユニ・チャーム、2009年には花王が進出した。

中国の消費者にとって、日本ブランドへの信仰は強い。日本製品は紙の質から、漏れにくく蒸れないと、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)でも評判である。従来、股割れパンツ(股間に穴が開いている)が主流だった中国だが、所得向上に伴い、使い捨ての紙おむつが浸透。普及率は25%に達した。「気」の流れを大事にする国民性もあり、通気性のよさなどが支持されている。

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