「パナマ文書」流出させた弁護士事務所の正体 共同創設者の一人は小説家としても成功

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しかし手順が決まっているからといって、コンプライアンスが確保されているとは限らないと、専門家は指摘する。オフショア取引の本当の当事者は誰で、その資金源はどこかを、事務所が顧客に問いただせなければ、真のコンプライアンスは確保できないというのだ。

「この手の法律事務所は、どんな顧客も歓迎して、顧客の指示に従うことが非常に多い」と、かつて米上院の調査官を務めたマネーロンダリングの専門家ジャック・ブラムは語る。

急増する「オフショア口座」

オフショア口座はここ数十年で急増しており、マネーロンダリングや税逃れ、テロ資金に利用されることも増えた。こうした口座では、違法行為に従事する者が、合法的な利用者と同じ機密性を享受できる。

国際的な資金の流れの透明性確保に向けた動きも高まっているが、長年独自の道を歩んできたパナマは、コンプライアンスからほど遠い状況にある。「過去25年ほどのうち、規制がほぼゼロの時期がだいたい15年間あった」と、アイゼンマンは語る。

だが、2014年にFATFの監視国リストに加えられたことが、パナマにとって大きな転機となった。バレラ大統領は、直ちに問題に対処する法案の成立を指揮し、パナマは今年2月に監視国から除外された。

 しかしパナマは、経済協力開発機構(OECD)が2009年に立ち上げた、透明性イニシアチブには抵抗してきた。英領バージン諸島、ケイマン諸島、シンガポールなど、ほとんどのオフショア金融センターは、このイニシアチブに速やかに対応している。

「パナマは、各国の税当局や法執行当局の目を逃れて、海外への資産隠しを可能にする最後の大がかりなオフショア金融センターだ」と、OECDのアンヘル・グリア事務総長は語っている。

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