中国が香港の大富豪をバッシングする理由

「恩知らず」批判の裏にどんな思惑が

中国からの冷たい風にさらされる香港 (写真:cozyta / PIXTA)

中国政府と、尊敬を集める香港最大の資産家である李嘉誠氏との間に、困ったもめ事が起きている。この争いは、タブロイド紙で話題になる厳しい離婚のような様相を呈してきている。中国メディアは最近、情け容赦なく李氏に辛辣な言葉を浴びせている。

事の発端は、李氏が自社の登記を香港からケイマン諸島に移した後に、上海にある主要な資産を売却したことだ。これ自体はよくあることで、納税義務の最小化を狙った理性的なビジネス上の判断だ。

実際に、香港の上場企業の約70%がカリブ海域諸島で登記されており、インターネット大手アリババなど、多くの中国本土の大企業でさえも、海外のタックスヘイブンで登記を行っている。

「恩知らず」で「非愛国的」

しかし、中国メディアの幼稚な説明によれば、この行為は、李氏が「恩知らず」で「非愛国的」であることを示している。彼を極貧の状態から世界有数の資産家にした中国という国を、同国が李氏を最も必要としているときに、彼が捨てようとしている、というのだ。

この滑稽な説明は、彼が中国に投資する前からすでに世界有数の資産家だった事実を無視している。これは政治問題だからである。中国が香港への支配を強化しようとするにつれて、李氏は独立心を見せ始めた。そして、共産主義者のルーツに忠実にトップダウン支配を信奉する中国の新しい支配者たちを、まったく好まないのである。

現在進行中のもめ事は、李氏と中国政府との関係が大きく変わったことを示している。鄧小平氏のかつてのアドバイザーで、前国家主席の江沢民氏 (彼の政治的影響力は現在弱まりつつある) の親友である李氏は、1989年の天安門事件の後、最初に中国に投資した1人となった。彼は長い間、「中国の国益に反することは一切せず、中国の評判を傷つける可能性のあることは一切言わない」とのモットーを掲げていた。

このモットーが変わったのは、2012年に梁振英氏が香港の行政長官に指名されたときだ。行政長官の最初の候補だった唐英年氏は、個人的な軽率さなどから撤退を余儀なくされた。

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