「パナマ文書」流出させた弁護士事務所の正体 共同創設者の一人は小説家としても成功

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パナマは2014年、政府間機関「金融活動作業部会(FATF)」が作成する「国際マネーロンダリング監視国」に指定されたが、政府の対策が奏効して、今年2月に指定解除に成功していた(ただしタックスヘイブンとしての監視は続いていた)。

バレラ大統領は、パナマ文書を機に始まった司法捜査に全面協力する意向を明らかにしている。それは自分の元顧問に対する尋問を許可することにつながるかもしれない。

顧客にはカダフィ、ムガベ、アサドなど独裁者も

モサック・フォンセカは一貫して、違法行為への関与を否定している。フォンセカ自身も、対話アプリ「WhatsApp」を使った1時間ほどのインタビューで、「この嵐がやみ、青空が戻ってきたとき、唯一の犯罪は(事務所文書の)ハッキング行為であることに、多くの人が気づくだろう」と語った。

しかしフォンセカを知るパナマ人の中には、パナマ文書が示唆するモサック・フォンセカの活動は、フォンセカが日頃から口にしてきた使命感と一致しないと語る。

カルロス・ゲバラ・マン元パナマ国務次官補は、かつてフォンセカに、弁護士で小説家としても成功しているのに、なぜ政治に関わろうとするのか聞いてみたという。するとフォンセカは、パナマの人権侵害の歴史を正したいからだと答えたという。「モサック・フォンセカの顧客に、カダフィ、ムガベ、アサド、プーチンといった人権侵害の主役たちが名を連ねていることを考えると、強い嫌悪感を覚える」。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、パナマ文書の中に、あるメールのやり取りを見つけた。モサック・フォンセカの幹部らが、長年付き合いのあるイラン人顧客の名前が、米政府と国連の制裁リストに載っていることに気付いたときのメールだ。

「これは危険だ!」と、モサックはフォンセカら幹部宛てのメールに書いている。「すぐに警告を喚起するべきだったのに」。そこでモサックは、このミスは、ロンドン事務所のスタッフが「適正注意義務を徹底的に(あるいはまったく)履行」しなかったために起きたことにした。

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