ECBのマイナス金利で欧州経済は泥沼へ

「南北問題」による弊害は確実に重くなる

マイナス金利政策を一段と進めたECBのマリオ・ドラギ総裁(写真: Reuters/Yves Herman)

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欧州中央銀行(ECB)がまたやった。フランクフルトでの直近の理事会で、月額の債券購入を600億ユーロから800億ユーロへとさらに増額して、社債も対象に加えることを決めた。中銀預金金利も一段と引き下げ、マイナス0.4%とした。これは中立的な政策とはかけ離れたものであり、ECBは通貨安定保持という責務から大きく逸脱している。

この方針決定の背後にある考えは明白だ。ECBのドラギ総裁は経済成長への大きな脅威であるデフレーションの抑制を重視している。デフレ進行に伴い債務返済はさらに困難になるため、企業は投資を控える傾向がある。欧州委員会統計局(ユーロスタット)が発表した2月のユーロ圏消費者物価指数は前年比0.2%低下しており、関心を集めている。

量的緩和が効かない理由

だが、現実に起きていることは、雇用などに波及するおそれがある厳密な意味でのデフレではあるが、構造的なデフレではない。実際には、原油価格が2014年6月以来で70%あまり下落したことが大きく響いている。

エネルギーや食品の価格を除外すれば、ユーロ圏が構造的に見て低インフレの状況にあることは事実だ。これは原油安と相まって経済に好影響を及ぼし、消費や投資の増大につながる。

では、流通市場に十分な資金を注ぎ込んだECBの大規模な量的緩和 (QE) 計画は財やサービスの需要をなぜ刺激しなかったのか? 理由の1つは預金者を失うことを恐れ、銀行がマイナス金利を預金金利に反映させたがらないからだ。その結果、量的緩和の目的に反して、家計や企業への信頼感が低下している。

一方でECBのインフレ刺激策は、債券購入の拡大継続が経済力の弱いユーロ圏諸国に悪影響を及ぼす潜在的な構造問題を無視しているのが現実である。さらに問題なのは、量的緩和でこうした国々は借り入れが容易になるため、困難な構造計画実施を回避できるようになることだ。

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