東芝、歴代社長らへの請求は32億で収まらず 個人、機関投資家が会社に訴訟提起
東芝は1月27日、旧役員に対して提起している損害賠償請求訴訟の請求額を当初の3億円から10倍以上の32億円に増やすと発表した。
一連の不適切会計問題を受け、2015年9月に一部の株主が会社を相手に役員の責任を追及するよう求めた。東芝は弁護士3名による「役員責任調査委員会」を設置した。調査委員会は11月に旧経営陣5人に対し「民事訴訟の提起により、責任を追及することが相当」と結論づけ、責任の所在を明確化した。それを受け東芝は、西田厚聰氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏の歴代3社長と最高財務責任者を務めた村岡富美雄氏、久保誠氏に計3億円を請求する訴訟を東京地裁に提起していた。
今回は回収可能性を勘案せず
大幅に増額をしたのは、有価証券報告書に虚偽記載があったとし、金融庁から納付命令を受けていた73億7350万円の課徴金を国庫に納付したこと。監査法人から2015年8月~9月に発生した過年度決算訂正に係る監査費用20億7152万円の支払いを済ませたことで、新たに損害として認識されたためだ。
計3億円の請求をした11月には、「回収可能性等も勘案した額の賠償を求めることが相当」とし、「旧役員に対して気を使ったのではないか」などという批判の声が多かった。だが、今回増額分について、東芝の古田佑紀監査委員は、「回収可能性を勘案して減額はしていない」と述べ、それぞれの責任に応じた額になっている。
とはいえ、東芝は課徴金や決算書類の過年度修正に係る監査報酬以外にも東京証券取引所や名古屋証券取引所に納めた上場違約金、信用毀損など合わせて100億円以上の損失が現時点で確定している。その3割程度しか旧役員に対して請求しないことになる。
金額の算出方法の詳細は明らかにされていないが、役員責任調査委員会で任務懈怠(けたい)があったと認められた、工事進行基準の3件とパソコンやテレビ事業での利益カサ上げや損失先送りの案件のみが損害賠償の対象となっている。
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