東芝、歴代社長らへの請求は32億で収まらず 個人、機関投資家が会社に訴訟提起

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東芝の個人株主らの損害賠償請求を支援している吉田泰郎弁護士は、「額を増やしたことは、今までよりは評価できる」と一定の理解は示したが、「32億円ではなく、総額を請求すべき」となお甘さが残ることを指摘する。

東芝が旧役員に対して甘くても、個人株主は大目にはみてくれない。株価下落による損失を被ったとし、既に東京、大阪、福岡で100名近くが東芝と旧役員5人に対して5億円超の損害賠償請求の訴訟を提起している。大阪と東京で2回目も計画されており、額や人数はさらに拡大しそうだ。

会社の損害が拡大すれば旧役員への請求も増額

加えて、今のところ目立った動きはないが、機関投資家も訴訟を起こすとみられる。損失計上を先送りしていたオリンパス事件では、機関投資家による損害賠償請求額が合計700億円を超えている。東芝は会社にさらなる損害が発生した場合、旧役員への賠償請求の増額も見当しており、32億円では収まりそうにない。

連帯債務とはいえ、旧役員それぞれの負担はかなり大きくなりそうだ。例えば、田中久雄前社長の場合、1億円を超えた役員報酬を受けていたのは2013年度と2014年度のみ。サラリーマン社長の個人の資力では支払いが厳しくなってくるだろう。旧役員5人にはまだ厳しい道のりが待っている。
 

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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