外国人エリートが驚く日本の大学の「特殊性」 留学生を震え上がらせる部活文化

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イェール大学のサマーセッションでは、世界の名門校に通う学生たちとの交流を深めた(中央が筆者)

もっとも、イェール大で出会った香港大学のココ・チェンさんによると、こうした体育会系の課外活動は香港の大学にもあるらしい。彼女によると、香港の大学では学生寮そのものが部活のようで、そこに住む学生たちはそれぞれの寮で頻繁に行われる行事などへの参加が強く求められているようだ。チェンさん曰く「学生寮で行われる活動や行事の多くは、学生たちを一致団結させ、帰属意識を高めることが目的。軍隊式の訓練を含む学生寮オリエンテーション(hello-o)というものもある」。

日本の大学の部活動や、香港の大学のこうした活動の目的は、チームワークを養うだけでなく、短期間で生徒間の絆を深めて共に障害を乗り越えることができる人材を育成する、という日本的な人材育成の考え方が背景にあるようだ。

一方、米国の場合はどうだろうか。イェール大に通うピーター・ワンさんによると、「スポーツに熱心な大学では、選手たちが日本の部活に所属する学生と似たような生活を送っているのではないか」。つまり、日本の学生と同様に、スポーツチームに所属する学生は夏休みや冬休み、週末も関係なく練習に勤しみ、試合などに参加している。ただしワンさんは、こうした活動に参加する学生たちの考えは、各国によって大きく異なると見ている。

欧米とアジアの学生の「意識の差」

欧米の学生たちが課外活動に参加するとき、自らに問うのは、「それだけの労力を費やす価値があるのか」「自分にとって利益になるか」であるのに対して、アジア圏の学生たちが問うのは、「自分はこれをやるべきか」「自分がこれをやらないと、ほかの人たちに迷惑がかかるか」「これは自分にとっても、他人にとっても重要なことなのか」ということだ。

対して、多くの日本の学生が参加するサークルについては「部活にコミットするのは無理だが、サークルは友人の輪を広げられるからいい」(ノルウェーからの留学生マリー・ストランドさん)と留学生からは好意的な意見が多い。

もうひとつ、私が今回、イェール大で強く感じたのは、日本と米国の授業、もしくは教え方の違いである。具体的に言えば、日本では教授が一方的に学生に教える「講義型」が多いのに対して、イェール大では生徒間もしくは、学生と教授間の議論を中心に据えた「議論型」が多いという印象を持った。

たとえば私がイェール大で受講した演劇論の授業では、マーク・ロビンソン教授が終始「正解」を教えることなく、つねに学生に質問を投げかけそこから議論をスタートさせる。時折、テキストに対する教授自らの解釈を話すことによって、会話を一定の方向に導こうとしていたのも印象的だった。

講義型と議論型のどちらがベターなのかについて、学生たちの感想はさまざまである。北京大学のモンソン・オーヤンさんは、「教授と学生の間にもっと対話があったら、授業は今よりもっと刺激的になる」と話す。ある日本人東大生も「自分の意見をきちんと言えるようになることは、コミュニケーションを円滑に行ううえでは大事なスキル。講義で教授の意見を一方的に聞くだけではなく、ほかの生徒も交えて意見交換をできればより多くのことを学べると思う」と同調する。

一方、同じ北京大学のヤン・フーさんは「講義型の授業は理論の重要性に重きを置いている。講義型の授業を受けることによって、学生は高度な理論的素養を身に付けたり、論理的思考を訓練できるのではないか」と話す。

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