迫り来る「メガトン級の巨大危機」に備えよ リーマンショックを予見した運用者が語る

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原油価格の1バレル100ドルへの高騰は供給側に原因があるわけではなく、中国の爆買い、需要の高まりによるものだったので、今の原油安は今後の新興国の苦境の予兆といえる。先進国の国債が大きく売られるということはなかなか起きにくいので、新興国の中の脆弱な国で問題が深刻化する。

新興国ではブラジルやロシアのほか、通貨がドルペッグし、原油価格の高騰に政府の財政が依存しているサウジアラビアも厳しい。中国は民間のドル建て債務が急激に膨張しているので、人民元切り下げでデフォルトが頻発するという形になる。昨年から、中国の不動産会社がドル建ての債券の償還を増やしており、これがキャピタルフライトに見えていることもある。

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ハイイールド債を組みこんだ投資信託などは日本にも多くの投資家が投資している。昨年からハイイールド債のデフォルトが出始め、ハイイールド投信の償還停止や解約停止が起き始めて、暴落の予兆が出ている。

債務が積み上がりすぎているため、中央銀行が緩和をしても効果が薄くなっている。先日のECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁による追加緩和をコミットする発言の効果も一日しか持たなかった。モルヒネを打ち過ぎて効かなくなっている。資産価格の投げ売り状態が出て、債務を軽くしないと解決しない。

中国政府はやはり勘違いをしている。市場も管理できると思っている。先進国はいろいろな経験をして結局は、どんなに介入しても市場を管理できないことを理解している。中国は、表向きは自由化を標ぼうしているが、政府に都合のよい方向に向かっていれば市場にまかせるが、そうでない方向に向かうと管理しようとする。

米国から祖国のためにと参加していた優秀なスタッフも、この1年ぐらいで民間企業に戻ったりして去っている。結局、党中央のエリートや習近平が反対すれば、改革は進まないからだ。中国人自身が不安を感じているので、キャピタルフライトも起こる。中国国内でお金を稼いでも、家族と資産は外国に置くというお金持ちも多い。

中国政府は解決できず、米国は"利下げ"へ

よく、中国には貯蓄が潤沢にある、外貨準備に余裕があるので、自力で解決できるという見方が語られる。しかし、私は懐疑的だ。それには、資本規制をガチガチにして資金流出しないように縛ってしまい、ゼロ成長を甘受して、時間をかけて構造調整を行うことになる。だが、それをやれば、失業が増大し社会不安が高まるので、政治的に保たないと考える。共産党の一党独裁体制が維持できなくなる。

いつも、危機の前には擁護派が出てくる。1997年にも、タイの中央銀行が対処できるという主張をしていた人々がいた。いわゆる“This time is different” theory (「今回は違う」理論)だ。

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