「昭和の竜宮城」がホテルに生まれ変わる必然

高級路線で訪日客を狙う「ホテル雅叙園東京」

宿泊については、すでに客室の改装計画があった。だが、客室の1部屋当たり面積を狭くしてビジネスホテル的な部屋を増やそうというプラン。「それでは雅叙園の良さが生かせないとストップさせた」(本中野氏)。

そもそも60ある客室のうち、実際に稼働していたのはわずか23室。それ以外は婚礼時に新婦が着替えたりメイクをしたりするブライズルームとして使われ、婚礼の付帯施設という位置づけにすぎなかった。

ほぼ全室スイート、華麗なるホテルへの転身

「お金を生み出さないスペースを生み出すものに変え、坪単価効率を向上させていくことが業績回復には必要不可欠。ブライズルームは美容室を改装してそちらに移し、60室すべてを客室として利用できるようにリニューアルした」(本中野氏)

客室は和テイストの落ち着いた雰囲気(撮影:今井康一)

客室はほぼ全室を80平方メートル以上のスイートルーム仕様にし、ジェットバスやサウナを完備。「和敬清心」をコンセプトに、茶道のわびさびに代表される精神性を意識した内装になっている。客室は6階から最上階の8階。宿泊者専用のチェックインカウンターのある8階には、桜をテーマにしたエグゼクティブラウンジも設けられている。

「雅叙園はそもそも豪華できらびやかなので、客室は落ち着きのある居心地よい空間にし、ゾーンとしての特徴を明確にした」(本中野氏)

2017年3月の客室リニューアル完了を受け、同年4月のリブランドではそれまでの目黒雅叙園から、ホテルを冠した「ホテル雅叙園東京」に転換。ホテルとしての立ち位置を明確にし、婚礼を含む宴会、宿泊、レストランのすべての部門を強化していく戦略をあらためて打ち出したのである。

「宿泊部門のメインターゲットは訪日客」(本中野氏)。名称から「目黒」を取り、「東京」に変えたのも、外国人客を意識してのことだ。たしかにMEGUROとTOKYOとでは、海外での訴求力に大きな差がある。

2017年9月には「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド(SLH)」に加盟した。SLHは1989年に発足した英国に本部を置くホテルグループで、世界80カ国520軒の独立系ホテルで構成されている。その名称のとおり小規模で、高級感のある個性的なホテルであることが加盟条件になっている。

婚礼やレストランの改革効果と相まって、経常赤字に陥った2014年度に71.9億円だった売上高は2017年度に96.9億円へ増加し、4.7億円の経常利益を計上した。婚礼プロデュース事業を手掛ける子会社のクレッシェンドプロデュースを今年4月に吸収合併したこともあり「2018年度は売上高120億円を目指したい」(本中野氏)。

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