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英国のEU離脱は失敗が目に見えている 1年後には英国の交渉力は弱体化する

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  • 中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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メイ首相は「2年以内の交渉妥結」に楽観的。だが、英国はEUとの交渉で圧倒的に不利な立場にある(写真:REX FEATURES/アフロ)

いよいよ英国がEUに離脱を通知し、原則2年間の交渉が始まります。スケジュールどおりになれば、英国は2019年3月末にもEUを離脱するといわれています。英国のメイ首相は最近、「2年以内に交渉を終えることができると楽観している」と述べましたが、本当にそのようになるのでしょうか。

英国はこれからEUに追い込まれていく

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私はそのようになるはずがないと考えています。現実を直視すればするほど、交渉期間はわずか2年しかないという苦境が浮き彫りになってくるからです。

まず真っ先に、英国はEUとの新しい貿易協定を結ぶ必要に迫られていますが、それ以前に、現在EUが英国に適用している農業や環境などの規制を英国独自の規制に作り替えなければ、EUとの新しい貿易協定を結ぶための交渉さえ始めることができないのです。

当然のことながら、そういった貿易協定に関する交渉と並行しながら、経済、司法、市民の権利、教育など多くの分野においても、EUとの新しい協定を結び直すための交渉を進めていかなければなりません。EU法が絡む進行中の訴訟案件についても、緻密な調整が不可欠となります。英国の政治・行政はこれから、気が遠くなるような交渉や作業に時間を浪費することになるでしょう。

過去のFTA交渉の事例を振り返ってみると、EUと英国の貿易協定がまとまるには少なくとも5年、通常の場合10年はかかるといわれています。オバマ政権下で進められた米国とEUのメガFTA交渉などは、5年以上経ってもほとんど進展が見られなかったのです。英国がどうあがいても、2年という短い期間では、従来の貿易協定が失効するのが先になってしまうでしょう(もちろん、交渉の延長という選択肢は残されていますが)。

ところが実際は、協定締結までの期間は2年よりもずっと短いものにならざるをえません。多国で展開する企業にとっては、少なくとも離脱の1年前にはEUと英国の関係がどのように変わるのか、明白になっている必要があるからです。すなわち、英国にとって正味の交渉期間は1年足らずしかないわけで、これから英国がEUに追い込まれていく様子が手に取るようにわかります。

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【大陸に拠点を移す企業が相次ぐことに】

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