セミナーレポート

財政健全化の先に見える
新たな成長軌道

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約2億の人口と世界7位のGDPを擁し、高い潜在成長力を持つブラジルへの進出を考える「グローバル経営支援セミナー ブラジル編」が2015年11月、大阪、東京、名古屋の3会場で行われた。財政健全化改革の途上にある同国経済の見通し、通貨レアル下落で割安になった投資機会と事業戦略、法務上の留意点等を検討した。

共催:三菱東京UFJ銀行 東洋経済新報社
協賛:アンダーソン・毛利・友常法律事務所

 

大倉雄一氏
三菱東京UFJ銀行
常務執行役員
国際部門副部門長  

冒頭、あいさつに立った三菱東京UFJ銀行の大倉雄一氏は、ブラジルは財政改革に伴う景気後退等によって厳しい情勢にあるものの「次の一手を考える好機」と強調。同行はブラジル各州投資局などと業務提携を進めており、「現地ビジネスを面でサポートします」とアピールした。

【特別講演】

アンドレ・コヘーア・ ド・ラーゴ閣下
駐日ブラジル連邦共和国
大使館 大使

ブラジル大使のアンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ氏は2015年で国交樹立120周年を迎える日伯関係の歴史を振り返り、「今後、関係は一層深まるでしょう」と期待した。現在の状況については「制度は強化され、社会は成熟に向かっています。危機は新たな成長の機会でもあるのです」と訴え、長期的視点での投資検討を呼びかけた。

【講演Ⅰ】
「財政健全化の先に見える新たな成長軌道」

オクタビオ・デ・ バホス
ブラデスコ銀行
経済調査部取締役兼
チーフ・エコノミスト

ブラジル民間で最大級のエコノミストチームを有するブラデスコ銀行経済調査部のオクタビオ・デ・バホス氏は、財政危機による国債格下げ懸念や国営企業を巡る汚職事件に揺れる状況について「私たちは、危機的状況をバネに必要な改革を行い、信用を取り戻さなければならない」と述べた。「New Mediocre(新たな凡庸)」と呼ばれるグローバル経済の停滞に加え、国内にも課題を抱えるブラジルは2015年が3%、翌16年も1.5%のマイナス成長と見込まれている。しかし、バホス氏は「ブラジルは必要以上に悲観的に見られている」と指摘。公的支出拡大に上限を設ける財政改革、労働市場柔軟化などの労働改革、二国間協定推進やTPP参加も視野に入れた経済開放、道路や空港などのインフラ運営権を民間に売却するコンセッション推進、汚職防止の制度強化を行うことにより、信用を回復できると強調した。「ブラジルは、新興国の中でも産業セクターに偏りの少ない多様性に富んだ経済構造を有し、民主化によるオープンな対話もできる国です。長期的成功への道は確保されていると思います」と、未来への見通しを語った。

【講演Ⅱ】
「ブラジル戦略再考~復調を待つのか」

小池淳介
三菱東京UFJ銀行執行役員
中南米総支配人兼
ブラジル三菱東京UFJ銀行
頭取 

恵まれた一次産業基盤と将来性のある国内市場を持つブラジルの中長期的なポテンシャルは高い。三菱東京UFJ銀行の小池淳介氏は「目先の見通しが悪いと、進出先延ばしという判断になりがちだが、本当にそれでいいのか、検討していただきたい」と訴えた。国土が広大で多様性に富むブラジルには、農業や医療機器など好調なセクターもある。低迷する自動車分野でも、旺盛な購買意欲を持つ富裕層をターゲットにシェア拡大に成功している企業もある。知識集約型産業が集積し、経済の落ち込みも小さい、リオ・グランデ・ド・スル州など南部3州にフォーカスした参入も有望だ。これまで割高なコストのために敬遠されてきたブラジルからの輸出も、現地政府が促進策を打ち出し始め、レアル安に伴う海外からの現地企業M&Aも堅調だ。多くのブライトスポットを指摘した小池氏は「森全体と同時に一本一本の木を見れば、ブラジルには多くのビジネスチャンスが見つかります。レアル安で参入コストも歴史的低水準にあり、従来は考えられなかったブラジルからの輸出という可能性も生まれつつあります」と語った。

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