その一方で、磯村勇斗が「ブラックコメディとして成立している」と形容するように(※1)、その状況を俯瞰し、周囲の人物も描くことで笑えるようにもなっている、少しテイストの異なる作品だ。『さんかく』などの、初期から得意とする、いびつな人間関係や、その関係性が崩れていく様を描く作品群も彷彿とさせる。
また、吉田監督は、ジャニーズ事務所時代からSTARTOのアイドルを主演に起用しており、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(安田章大、13年)、『銀の匙 Silver Spoon』(中島健人、14年)、『ヒメアノ〜ル』(森田剛、16年)などがある。
STARTOのアイドルはファンを多く抱えている。ある意味では、彼らが出演する映画を公開すれば、一定の観客が入ることが保証されていると言ってもいい。
そのため、アイドルの人気に頼るだけで、作品としての質に真剣に向き合ったとは思えない“アイドル映画”はときどき存在してしまうが、興行的には一定以上は広がらない。
「アイドル自身の奥底」に触れたような感覚にさせる
しかし吉田監督のこれらの作品群はそうはなっておらず、逆に、その興行的な安心感の上に、存分に作家性を発揮している印象だ。吉田監督のSTARTOアイドルの起用作品には、作品としての質を当然ながら担保したうえで、出演したアイドルの可能性を広げ、観客には彼ら自身の奥底に触れたような感覚にさせてしまう魔法みたいな部分がある。
つまり、ファンだけでなく、そのアイドルを知らずに見た層も満足させる作りになっているのだ。


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