このタワーの1階部分は広い吹き抜け空間になっていて、「檜物(ひもの)町スクエア」と名付けられている。檜物町とは、江戸時代のこのあたりの町名で、木製の容器などを作る檜物職人が住んだことに由来する。11月上旬には「TOKYO ART DOTS」という回遊型のアートイベントが開かれるがここはその核となっている。
さらに、再開発で立ち退きとなった老舗が再びこのビルの中に出店しているのも大きな特徴である。1850(嘉永3)年、仕出しの店として日本橋に開業した割烹嶋村、そして1949年に開業しジャンボ餃子で知られる本格中華の「泰興楼」が「TaiKouRou TOKYO」として、ともにタワーの1階に再出店した。どちらも通りに面しているので、路面店のような雰囲気で入りやすい。2階に設けられた専門店ゾーン「YAESU 東京界」には百名店にも選ばれるような東京各地の飲食店がスタンド風の店舗を出していて、ふらっと入りやすいしつらえである。
バスターミナルの真上に生まれる新たな結節点
現地を訪れた日はタワー2階の和食の店に入ったが、日曜日だったので旅行客らしきグループや女性同士の2人客などで賑わっていた。店のスタッフによると、平日はサラリーマンの姿が増えるという。周囲にオフィスが多い八重洲、日本橋ならではだろう(なお、トフロムタワーは東京メトロの日本橋駅から歩いてもすぐである)。そのほか、同じ2階には明治35年創業の老舗蕎麦屋「日本橋やぶ久」も入っているし、タワー棟に隣接して今冬開業予定のトフロム八重洲ザ・フロントには、早々と11月1日、馬喰横山で誕生した「BERTH COFFEE」も開業する。バスターミナルの真上にこうした賑わいや医療・文化の空間が整備されることで、それ自体が巨大な商業施設となっているJR東京駅とはまた違った交通とサービスの結節点となっていきそうだ。
実は再開発によるバスターミナルの計画は各地にある。国土交通省が全国で「バスタプロジェクト」を進めているからだ。神戸市の三宮駅前(JRの駅名は三ノ宮、阪急と阪神は神戸三宮)では、2028年の完成に向けてバスタ神戸三宮の工事が進行中。新たにつくられる高層ビルは地上32階でほぼ姿が見えてきている。1~3階にはバスターミナルと商業施設、その上は文化ホール、図書館、オフィス、ホテルが入居する予定で、現在やはり整備中のJRの駅南側の再開発と合わせ、三宮のイメージもかなり変わりそうだ。これまでは都市の中心はほとんど鉄道の駅が立地の要になっていたが、新宿や東京に続いて、駅とバスターミナルの相乗効果がこれから各地で生まれそうである。


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