絵奈「母の影響です。母は宝塚歌劇が好きで、幼い私を連れて、有楽町にある東京宝塚劇場での公演を観に行っていたんです。大地真央さん、剣幸(つるぎ・みゆき)さんたちが活躍した時代でした。私も宝塚歌劇がなんとなく好きになり、北海道に移住してから、たまたま水美舞斗さんが出演する札幌公演に当選して。すると……この作品が本当に素晴らしくて。ズドンッ!と胸を撃たれたくらいの衝撃でした」
それは2017年のこと。水美舞斗さん出演の札幌公演、全国ツアーの千秋楽だった。一寿さんの運転で、札幌まで車で約3時間。この道のりが、絵奈さんの推し活の幕開けとなったのだ。
絵奈「『EXCITER(エキサイター)!! 2017』(脚本/柴田侑宏 演出/中村 暁)という作品でした。後半に水美さんがすごい勢いで踊るダンスシーンがあって、あんなに激しく踊ったのに、すぐあとの歌唱シーンでは大きくてまっすぐな声で歌い上げていて。もう、思い出しただけで、いまだに鳥肌が立つ強烈な体験でした」
一人のタカラジェンヌに心を奪われた妻を、夫はどう見ていたのだろう。
一寿「僕は当時、まだ宝塚歌劇にぜんぜん興味がなくて、札幌の劇場前で彼女を降ろしたあとは連れてきた犬と散歩をしていました。帰りの車の中で、水美さんの魅力を興奮気味に語る彼女の話も『ふーん』という感じで聞いていましたね」
「推し」の全国ツアーを追いかけ、宿泊費の節約が課題に
水美さんに魅了された札幌公演の夜から、絵奈さんの生活は激変した。北海道から「推しの追っかけ」をするようになったのだ。
絵奈「人生の転換期だったと思います。宝塚歌劇の札幌公演を観に行く少し前に、ペットホテルを閉めたんです。周囲に夜間対応してくれる動物病院がなく、お客さまの愛犬の命を預かる自信がなくなって。そんな時期に水美さんと出会い、北海道以外の公演を観る資金を蓄えるために、めちゃくちゃ働きました。町役場の仕事と料理教室の先生を掛け持ちして『遠征以外の時間は全部出勤』という日々。水美さんがいたから、がんばれたんです」
推し活に夢中になる絵奈さんに感化され、夫も次第に宝塚歌劇に興味を示すようになってきた。

