施設展開について、丹羽さんは、介護を担う家族の負担という観点からも語った。
「僕は、『物理的距離』と『優しい距離』は違うと思うんです。家から近いと、家族に『頻繁に会いに行かなくちゃ』というプレッシャーがかかる。なかなか行けないと、自己肯定感も下がってしまうんです。
でも、ご家族だって今までさんざん頑張ってきたんだから、自分の人生を楽しんで、明るく生きてほしい。そうじゃないと、僕らが彼らの人生を預かる意味がないんです」
死ぬまでロマンを追っていたい
人に騙され、人間不信に陥って引きこもっていた丹羽青年を外へ連れ出したのは、高齢者からの「ありがとう」だった。
誰かに「ありがとう」と言われれば、自分の承認欲求も満たされる。その喜びが、もっと誰かのために頑張る力になる。仕事を続け、事業を育てるなかで、自分の暮らしも豊かになっていく。
誰かのために働くことが、自分の幸せにもつながっていく。誰かの役に立ちたい。けれど自分の幸せも守りたい。その2つは、丹羽さんのなかではつながっているように見える。
「引きこもりだった若者がいま、いい仲間に囲まれて事業を拡大して、いろんな人に注目してもらっている。こんなに承認欲求も達成感も満たされる生活になるなんて、あの頃の僕は思ってもみませんでした。だから、この業界にはとても感謝しています。恩返しのためにも、僕のやれることを全部やっていきたい」
では、介護で上場を目指すのかと思ったら、それも違う。大真面目に、「この世から介護の悩みをゼロにしたい」と、丹羽さんは語る。
「金を持ってるやつが偉いわけじゃない。僕は、死ぬまでロマンを追っていきたいんです」
取材は、障害者デイサービス事業所「生活介護atto」の作業室で行われた。インタビューは、利用者の出入りによってたびたび中断される。突然、部屋の入り口から呼び声が響くのだ。そのたびに驚いていたのは私だけだった。丹羽さんもスタッフも、その呼びかけに友人のように笑顔で応えていた。<後編へ続く>


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