学年が上がると、自身の専門性を軸に、リサイクルやヘルスケアなどの応用領域の知見を広げることも可能だ。こうして企業活動でも必要な「デザイン思考」を持った学生を育てるのだ。
愛犬がカメラを見てくれない
では、一般の工学部とは何が違うのか。例えば、機械加工で、従来よりも精度を高める技術が実現できたとしても、「その技術を何に生かすのかという視点が欠けていれば、技術の進歩が新たな価値の創出につながるとは限りません。
大切なのは、精度の向上そのものを目的とするのではなく、実現したい製品や解決したい課題を起点に、必要な精度や技術を考えることです。技術者は、精度を高めること自体が目的化し、その技術の応用先や社会的な意義を見失ってしまうことがあります」と佐々木教授は言う。
もちろん、技術を深く追求することも大切だ。ただ、デザイン工学部では、技術を高めることだけを目的にしない。
「本当の目的は何だったのか。その技術を使って、誰のどんな問題を解決するのか。そこを考え、実際に形にするトレーニングを積んでいます」
身近な困りごとが、研究のタネになることもある。犬が大好きなある学生は、愛犬の写真を撮ろうとしても、なかなかカメラを見てくれないことに目を付けた。そこで、音声で犬をカメラ目線に誘導し、写真を撮りやすくするシステムを作った。
他にも、パソコンが苦手な高齢者が遠隔でゲームを楽しめるように、盤上に透明のコマを置くと白や黒の色が付く「オセロ」を開発した学生もいた。カメラがコマを読み取って色を投影する「画像認識技術」を使ったという。
佐々木教授の研究室では、大学院生を中心に学生たちは第1希望の企業への就職を果たしているという。27年卒はアクセンチュア、日立製作所、東京電力、スズキなどに内定した。同大によると、デザイン工学部では企画職や商品開発系の職を目指す学生も多い傾向にあるという。

