「お節介野菜」のカットに集うおばあちゃんたちは、包丁を握り、作業をする。この手足を動かす時間が、「サルコペニア(加齢による骨格筋量の減少)」に影響するのかを、岡山大学や真庭市と連携して特定臨床研究を行ったという。ゴミ処理業から始まった循環が思いがけず、高齢者の健康というテーマにまで枝を伸ばしている。
真庭市の高齢化率は約40%。人口約4万人のうち1万6000人が高齢者だ。そのうち実際に働きたい人が1割だとしても、1600人の担い手がいることになる。人口減少と高齢化は、この町では課題であると同時に、労働力でもある。
加えて、あぐりガーデンは単なる客のための複合施設ではなく、体験の場でもある。家庭の中だけでは触れる機会が減った「お節介を焼かれる経験」を、この施設で体験してもらう。
おばあちゃんのお節介と現代の子どもを「食」でつなぐことで、何かが変わるかもしれない。身体にいい食品を選ぶ目を養う場にもしたい。そんな期待を込めた場だという。
「本気で目の前の人を思って行動したことが、将来、大きな価値になると信じています。ニーズに応えることで、人に必要とされる。企業はサービスを提供することで対価をいただく。そうすることで、会社は成り立つと考えます。だから、職員には『私たちがやることは、お節介なんだ』と徹底しています」
「うちは、影の立役者なので」
創業110年の歴史ある企業の4代目として、自分が事業を潰してしまってはならない。そう思っていた牧さんが地域に目を向けると、様々な課題が見えてきた。そこにお節介を焼き続けて、今がある。
牧さんの頭の中にある企業理念「共生」のイメージは、「山の上のゴツゴツの岩壁に立つ1本の大木」だという。
山の上の木が枯れずに生き残るのは、なぜか。木は枝を張る。それは、鳥に巣を作ってもらうためだ。鳥は、海や川の魚を食べて木に戻る。その鳥の糞が、木の栄養素になるからだ。そして落ち葉などの山の栄養分が雨により地下水に含まれ、川から海へと流れる。その栄養分で育ったプランクトンを食べた魚を鳥が食べ、山へと戻っていく。
「すべてが循環しているんです。私も自然界に生かされているのであれば、自分たちの役割を果たさなければならないと考えています」
地域に根を張り、強い風が吹くと倒れるというリスクを背負ってでも枝を張る。それぞれが自分の役割を果たすことですべてが循環し、結果的に自分も生き残る。
「うちは、影の立役者なので」
十字屋グループの本業である環境衛生業は、50年もの長きにわたり黒字だ。それでも、「廃棄物の処理事業によって地域から得られた収益を、次は地域に還元する」と、行政と連携する新規事業に投資を続けた。その積み重ねが自治体すら動かし、真庭市の景色そのものを変えた。
20年投資の種をまき、背負い続けた循環事業は2025年、経営面でもようやく一つの区切りを迎えたという。「地域に必要とされないと生き残れない」という言葉は、理念だけではなく、20年分の経営記録が証明した事実だった。


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