事業承継・M&A活用法 ~次代へつなぐ、経営者の想い~

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譲渡オーナーによる体験談
譲渡決断の経緯
~そして今、思うこと

クラカタ商事
名誉顧問
蔵方 肇

長崎県から東京に出稼ぎに来て、一代で総合ビルメンテナンス会社を築いた蔵方肇氏は、「私自身は健康には自信がありましたが、従業員らは私の年齢を不安に思い始めていました。サラリーマンだった息子に継がせることも考えましたが、うまくいかなかったらという心配もぬぐえませんでした」とM&Aを検討し始めた3年前の状況を説明した。30年以上を共にした仲間の処遇が最大の懸念だったが、待遇は変えないという条件が相手から示されたことで、M&Aを決断した。蔵方氏は「M&Aの検討は、自分も会社も元気な時に始めるべきです。対等な交渉ができないと、仲間の能力への評価も下がってしまいます」と強調した。

●モデレーター
M&Aキャピタルパートナーズ
池ヶ谷博章

また、「豊富な情報を持ち、最適な相手を選べるアドバイザーも重要」と指摘。仲介した池ヶ谷博章氏は「業界再編期という背景もあり、良いご縁ができて幸いでした」と応じた。

譲渡オーナーによる体験談
私が会社を譲渡した理由

ビューティドラッグ
サイトウ 会長
斎藤光人

さいたま市浦和区に8店舗を持つ調剤薬局およびドラッグストアを経営していた斎藤光人氏は、還暦を過ぎ、事業承継に悩んでいた。役員の息子に継がせるつもりだったが、業界を見渡すと、国の政策で調剤報酬が削減されるなど、将来の不透明感は強まっていた。「従業員130人を抱える経営者の責任として雇用を安定させ、社是の『活力あふれる企業』であり続けるには、どうしたらいいか」(斎藤氏)。その選択肢の一つとしてM&Aが浮上。紹介された企業の中から、一部上場で安定した経営を行い、信頼性も高い大手企業への譲渡を決断した。

●モデレーター
M&Aキャピタルパートナーズ
土屋 淳

仲介した土屋淳氏が「業績好調なうえ、業界再編期でM&Aが活発でした」とタイミングの良さを指摘すると、斎藤氏は「経営者はチャンスを見極め、決断できることが大事です。譲渡先から大事にされ、生き生きと働く社員を見て、良かったと思っています」と述べた。

総括
事業承継・M&A成功のポイント

再び登壇した中村氏は、M&Aの実務上のポイントを語った。買い手側には、「M&Aで何を補強したいか具体的に狙いを絞る」ことや、「相手に敬意を払う」ように注意を促した。譲渡側のオーナーには「交渉から引き継ぎ終了まで3年程度の長い期間がかかる」ことや、「株価が高くなるのは業界再編期や業績伸長期」として、タイミングの重要性を訴えた。また、「社員や取引先には決済終了まで秘密で交渉を進めなければならない」ことの大変さを強調。「最後で最大の決断となる事業承継を真摯にお手伝いします」と締めくくった。