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事業承継・M&A活用法 ~次代へつなぐ、経営者の想い~

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
経営者の高齢化、後継者不足、相続税増税によって難しさを増す事業承継について考える「東洋経済新報社経営者フォーラム2015《事業承継・M&A活用法》」が10月と11月、東京、名古屋、大阪、福岡の各会場で開かれ、注目されるM&Aの活用などを検討した。

主催:東洋経済新報社
協賛:M&Aキャピタルパートナーズ

特別講演
[東京・名古屋会場]

人間を磨き、格を高める経営
~100年スパンで考える生き方と経営~

AOKIホールディングス
代表取締役会長
青木擴憲

戦後に背広の外商からスタートし、ファッションを中心に、ブライダル、カラオケなどエンターテインメントの事業グループを築いた青木擴憲氏は「事業承継には冷静な分析が必要」と、オーナー家族の過去・未来各100年の歴史を整理し、経営能力を見極めるように促した。また、ポートフォリオ経営で業績を伸ばせる要因について、「社会性(顧客満足)の追求×公益性(営業利益)の追求×公共性(社会貢献)の追求の3要素の掛け算」という経営理念を明確にすることで「業態を超えて物差しを統一することがポイント」と指摘。長期的視点や先見性、技術力を高める学びの重要性も訴えた。実施したM&Aについては、創業利益を得る売り手オーナー、活躍の場を得る社員、事業成長する買い手企業の〝三方良し〟となったことを強調。「事業承継、業績向上にはオーナーの健康と長生きが大切です」と締めくくった。

特別講演
[大阪・福岡会場]

リーダーの引き際と次世代育成

吉野家ホールディングス
会長
安部修仁

昨年まで22年にわたり吉野家の経営トップを務めた安部修仁氏は、197 2年に23歳でアルバイトから正社員に採用され、5年後には九州地区本部長に抜擢されるなど、当時の松田瑞穂社長の若手に任せる育成スキームで鍛えられた。「自分で考えて実行、反省をすることが大事」と振り返る。入社時は数店だった吉野家は約300店まで急拡大したが、80年に会社更生法適用を経験。再建後の92年に社長に就任すると「時代の変転の中で、吉野家の企業価値を未来に引き継ぐのが役割」と、リーダーの質と量の向上に努めた。次世代継承を本格的に考えた約5年前からは、40歳代の世代を選抜して討論などを行う会を開いて、河村泰貴・現社長を見いだした。安部氏は「創業は自己実現だが、継承は他人のために動く使命感が大事。そこに殉じる覚悟を決める必要があります」と語った。

基調講演
中堅・中小企業のためのM&A活用法

M&Aキャピタルパートナーズ
代表取締役
中村 悟

ハウスメーカー営業職時代に事業譲渡の相談を受けたのを機に、一人でM&Aキャピタルパートナーズを起業。昨年、東証一部に上場するまで成長させた中村悟氏は、オーナー経営者に対して「後継者となる子どもの存在、その子の継ぐ意思と能力、継がせて良い会社と業界の状況・将来性、の3点のうち一つでも懸念があれば、事業承継の際にM&Aが選択肢になり得ます」と指摘。経営の承継をしても株式の承継を怠った失敗事例や、M&Aを活用した事業承継の成功例を紹介した。同社の特色は、インターネットサイトの集客力や報酬体系で、企業価値算定や着手金など検討段階の手数料を無料化したうえ、負債額をベースに含めない独自方式で抑制的に報酬を算定。基本合意で1割、決済で残額を受け取る成功報酬制でコスト的なハードルを下げている。国内企業の約3分の2が後継者不在と言われる状況を踏まえ、中村氏は「M&A普及のため、検討しやすくしたい」と語った。

譲渡オーナーによる体験談
譲渡決断の経緯
~そして今、思うこと

クラカタ商事
名誉顧問
蔵方 肇

長崎県から東京に出稼ぎに来て、一代で総合ビルメンテナンス会社を築いた蔵方肇氏は、「私自身は健康には自信がありましたが、従業員らは私の年齢を不安に思い始めていました。サラリーマンだった息子に継がせることも考えましたが、うまくいかなかったらという心配もぬぐえませんでした」とM&Aを検討し始めた3年前の状況を説明した。30年以上を共にした仲間の処遇が最大の懸念だったが、待遇は変えないという条件が相手から示されたことで、M&Aを決断した。蔵方氏は「M&Aの検討は、自分も会社も元気な時に始めるべきです。対等な交渉ができないと、仲間の能力への評価も下がってしまいます」と強調した。

●モデレーター
M&Aキャピタルパートナーズ
池ヶ谷博章

また、「豊富な情報を持ち、最適な相手を選べるアドバイザーも重要」と指摘。仲介した池ヶ谷博章氏は「業界再編期という背景もあり、良いご縁ができて幸いでした」と応じた。

譲渡オーナーによる体験談
私が会社を譲渡した理由

ビューティドラッグ
サイトウ 会長
斎藤光人

さいたま市浦和区に8店舗を持つ調剤薬局およびドラッグストアを経営していた斎藤光人氏は、還暦を過ぎ、事業承継に悩んでいた。役員の息子に継がせるつもりだったが、業界を見渡すと、国の政策で調剤報酬が削減されるなど、将来の不透明感は強まっていた。「従業員130人を抱える経営者の責任として雇用を安定させ、社是の『活力あふれる企業』であり続けるには、どうしたらいいか」(斎藤氏)。その選択肢の一つとしてM&Aが浮上。紹介された企業の中から、一部上場で安定した経営を行い、信頼性も高い大手企業への譲渡を決断した。

●モデレーター
M&Aキャピタルパートナーズ
土屋 淳

仲介した土屋淳氏が「業績好調なうえ、業界再編期でM&Aが活発でした」とタイミングの良さを指摘すると、斎藤氏は「経営者はチャンスを見極め、決断できることが大事です。譲渡先から大事にされ、生き生きと働く社員を見て、良かったと思っています」と述べた。

総括
事業承継・M&A成功のポイント

再び登壇した中村氏は、M&Aの実務上のポイントを語った。買い手側には、「M&Aで何を補強したいか具体的に狙いを絞る」ことや、「相手に敬意を払う」ように注意を促した。譲渡側のオーナーには「交渉から引き継ぎ終了まで3年程度の長い期間がかかる」ことや、「株価が高くなるのは業界再編期や業績伸長期」として、タイミングの重要性を訴えた。また、「社員や取引先には決済終了まで秘密で交渉を進めなければならない」ことの大変さを強調。「最後で最大の決断となる事業承継を真摯にお手伝いします」と締めくくった。