事業承継・M&A活用法 ~次代へつなぐ、経営者の想い~
主催:東洋経済新報社
協賛:M&Aキャピタルパートナーズ
特別講演
[東京・名古屋会場]
人間を磨き、格を高める経営
~100年スパンで考える生き方と経営~
戦後に背広の外商からスタートし、ファッションを中心に、ブライダル、カラオケなどエンターテインメントの事業グループを築いた青木擴憲氏は「事業承継には冷静な分析が必要」と、オーナー家族の過去・未来各100年の歴史を整理し、経営能力を見極めるように促した。また、ポートフォリオ経営で業績を伸ばせる要因について、「社会性(顧客満足)の追求×公益性(営業利益)の追求×公共性(社会貢献)の追求の3要素の掛け算」という経営理念を明確にすることで「業態を超えて物差しを統一することがポイント」と指摘。長期的視点や先見性、技術力を高める学びの重要性も訴えた。実施したM&Aについては、創業利益を得る売り手オーナー、活躍の場を得る社員、事業成長する買い手企業の〝三方良し〟となったことを強調。「事業承継、業績向上にはオーナーの健康と長生きが大切です」と締めくくった。
特別講演
[大阪・福岡会場]
リーダーの引き際と次世代育成
昨年まで22年にわたり吉野家の経営トップを務めた安部修仁氏は、197 2年に23歳でアルバイトから正社員に採用され、5年後には九州地区本部長に抜擢されるなど、当時の松田瑞穂社長の若手に任せる育成スキームで鍛えられた。「自分で考えて実行、反省をすることが大事」と振り返る。入社時は数店だった吉野家は約300店まで急拡大したが、80年に会社更生法適用を経験。再建後の92年に社長に就任すると「時代の変転の中で、吉野家の企業価値を未来に引き継ぐのが役割」と、リーダーの質と量の向上に努めた。次世代継承を本格的に考えた約5年前からは、40歳代の世代を選抜して討論などを行う会を開いて、河村泰貴・現社長を見いだした。安部氏は「創業は自己実現だが、継承は他人のために動く使命感が大事。そこに殉じる覚悟を決める必要があります」と語った。
基調講演
中堅・中小企業のためのM&A活用法
ハウスメーカー営業職時代に事業譲渡の相談を受けたのを機に、一人でM&Aキャピタルパートナーズを起業。昨年、東証一部に上場するまで成長させた中村悟氏は、オーナー経営者に対して「後継者となる子どもの存在、その子の継ぐ意思と能力、継がせて良い会社と業界の状況・将来性、の3点のうち一つでも懸念があれば、事業承継の際にM&Aが選択肢になり得ます」と指摘。経営の承継をしても株式の承継を怠った失敗事例や、M&Aを活用した事業承継の成功例を紹介した。同社の特色は、インターネットサイトの集客力や報酬体系で、企業価値算定や着手金など検討段階の手数料を無料化したうえ、負債額をベースに含めない独自方式で抑制的に報酬を算定。基本合意で1割、決済で残額を受け取る成功報酬制でコスト的なハードルを下げている。国内企業の約3分の2が後継者不在と言われる状況を踏まえ、中村氏は「M&A普及のため、検討しやすくしたい」と語った。