馬と人類との付き合いは、非常に古いものです。
かつては、現在のカザフスタン北部にあったボタイ文化の人々が、紀元前3500年ごろに馬を家畜化し、その馬が現代の家畜馬につながったと考えられていました。
ボタイ遺跡からは、馬を囲い込んで飼っていた可能性や、馬乳を利用していたことを示す痕跡が見つかっていたからです。
ところが、古代DNAの研究によって、この見方は大きく変わりました。
「家畜馬のルーツ」は、いまも書き換わっている
2021年と2024年に『Nature』に発表された大規模なゲノム研究によると、現在の家畜馬につながる系統は、ユーラシア西部の草原地帯、とくに黒海・カスピ海北方の下ヴォルガ・ドン地域を故郷とし、紀元前2200年ごろから急速に各地へ広がっていったと考えられています。
一方、ボタイの人々も馬を飼養していた形跡はあるものの、その馬は現代の家畜馬とは別の系統でした。つまり、馬の家畜化は「ある場所で一度だけ起こり、そこからすべてが始まった」という単純な物語ではなかったのです。
人類は各地で馬との関係を試行錯誤し、そのなかの一つの系統が、のちに世界へ爆発的に広がった——。
研究が進むにつれて、教科書の前提そのものが書き換わっているわけです。


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