ただし、注意したいのは、旅行を「授業」にしすぎないことです。
訪れる先々でクイズを出し、帰宅後に感想文を書かせ、覚えたことを確認する。そこまでやってしまうと、子どもにとって旅行まで「勉強させられる時間」になりかねません。
まずは、楽しかった、驚いた、おいしかったという記憶が残ればいい。その記憶が、あとから学校で習う知識を受け止める土台になります。
お金をかけることが目的ではない
今回のアンケートは、1泊以上の国内旅行について聞いたものです。しかし、学びのきっかけをつくるために、必ずしも遠方や高価な旅行へ出かける必要はありません。
近隣の県へ1泊する。日帰りで城跡や博物館を訪ねる。農園や市場、工場を見学する。川の上流と下流を見比べる。近所でも、普段とは違う場所へ出かければ、子どもにとっては十分に新しい体験です。
大切なのは、旅行の回数や移動距離ではありません。教科書に書かれている世界と、自分が実際に見た世界がつながることです。その意味では、旅行だけが特別なのでもありません。散歩でも、買い物でも、帰省でも、子どもがいつもの生活の外に出て、「知らなかったもの」に出合えれば、そこには学びの種があります。
今回のアンケートでは、東大生263人のうち52%が、小学生の頃に年2回以上の国内旅行をしていたと答えました。この数字から、旅行と東大合格の因果関係を語ることはできません。しかし、旅行が子どもの学びを豊かにする理由はあります。
地名が、行ったことのある場所になる。産業が、食べたものや見た景色と結びつく。歴史上の建物が、教科書の中だけの存在ではなくなる。そして、自分にとっての「当たり前」が、世の中全体の当たり前ではないと気づく。
そうした体験が、子どもの中に「もっと知りたい」という気持ちを育てます。
「勉強しなさい」と言い続けるだけで、勉強を好きにさせるのは簡単ではありません。それよりも、子どもが「これ、見たことがある」「あそこに行ったことがある」「どうしてこうなるんだろう」と思える材料を、日々の中に増やしていく。旅行は、そのための有力な方法の一つです。
次の休みに家族で出かけるときは、「何を勉強させようか」ではなく、「どんな世界を一緒に見ようか」と考えてみてはいかがでしょうか。


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