また、ある労働組合では、会社の経営への不安が高まった時期に、労働組合への加入者が1週間で5倍以上増えたという話もありました。これら最近の事例が示しているとおり、自分の働く場所が危うくなったとき、人々は初めて団結し、対抗する手段として労働組合に関心を向けます。
しかし、今の日本で、そこまでの危機感を抱かせるような事態は、かつてに比べて起こりにくくなっています。その根底には、「そもそも、労働組合に頼らなければならないほどの切実な不満がなくなってきている」という、日本社会の労働環境の変化も影響しているように感じます。
ほどほど恵まれた労働環境、そこそこ安定した労使関係
もちろん、今でも多くの人が、仕事や職場に対して何らかの不満を抱えています。『連合および労働組合のイメージ調査2026』でも、有職者の59.2%が「不満がある」と回答しており、その筆頭は「賃金が低い」(28.3%)です。
しかし、かつて労働運動が激しかった時代に問題とされたような、「上司から灰皿が飛んでくる」「理由もなく蹴飛ばされる」といった、人権を無視したような劣悪な労働環境は、現代の日本ではさすがに稀になりました。
コンプライアンス意識の高まりや、SNSによる"告発"のリスクもあり、企業側も無茶な働かせ方ができなくなってきています。よくも悪くも、多くの職場が「ほどほどに豊かで、ほどほどに平和」な状態にある。だからこそ、労働組合に"団結して何かを勝ち取ろう"という強い動機が生まれにくいのです。
この「ほどほどの安定」は、労使関係そのものにも表れています。厚生労働省の『令和6年労使コミュニケーション調査』によると、自社の労使関係について「安定的(「安定的に維持されている」と「おおむね安定的に維持されている」の合計)」と認識している事業所は86.2%にものぼります。


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