諫山創 講談社 書籍情報
今回の「人生に最も影響を与えた本」で最多の4票を集めたのが『進撃の巨人』でした。自由記述で回答が幅広く分かれた中で、複数の学生が同じ作品を選んだこと自体が目を引きます。漫画ですが、学生たちが受け取ったものは、歴史、教育、差別、正義、自由といった重い主題でした。
「人種差別や教育の違いによる偏見など、現実社会の問題を取り上げており、非常に学びになった」(3年・理系)
「『自由』を象徴としており、自分の人生において自由であることを意識するきっかけとなった」(1年・文系)
さらに、「圧倒的没入感で、エンタメの道に進むことを決意できた」(4年・文系)と、職業選択に直結した回答もありました。自由とは何かを考えさせられた学生もいれば、物語をつくる側へ進む勇気を得た学生もいる。同じ作品が、社会を見る目と、自分の将来を見る目の両方を変えているのです。
「多様性」という言葉だけでは説明できない
朝井リョウ 新潮社 書籍情報
『正欲』は、大学に入って価値観が変わった本を尋ねたアンケートだけでなく、「衝撃を受けた本」を尋ねたアンケートでも名前が挙がりました。私たちは「多様性」や「他者理解」を、基本的には良い言葉として使います。しかしこの小説は、その言葉だけではすくい取れない人の存在を突きつけます。
「自分が普通だと思っていた価値観を、根底から殴られたような気分になった」(3年・理系)
「『多様性』や『他者を理解すること』という、普段は肯定的に捉えている言葉そのものについて考え直させられた」(3年・文系)
読み終えたあとに答えが残る作品というより、それまで使っていた言葉をそのまま使えなくなる作品です。「考えを誰かと話したくなった」という回答があったのも象徴的でした。簡単には理解できない他者を前に、それでもどう関わるのか。自分の善意まで点検させられる不快さが、この本を決定的な一冊にしています。


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