カズオ・イシグロ 早川書房 書籍情報
臓器提供のために生まれ、外の社会から隔てられて育ったクローンたちを描く小説です。静かな学園生活の記憶をたどる語りの奥から、人間の尊厳や命の価値という重い問いが立ち上がってきます。この本を「自分の人生を変えた一冊」に挙げていた学生は何人かいましたが、こんな回答もありました。
「医者を目指す自分にとって、命の価値は誰にとっても不変なものであることを再認識させられた」(1年・理系)
医療の道を目指すとき、必要なのは知識や技術だけではありません。目の前にいる一人の命をどう捉えるのかという倫理観も問われます。この作品は、その問いを説明するのではなく、登場人物の人生を通して読者に引き受けさせます。だからこそ、医師を志す学生にとって忘れられない一冊になったのでしょう。
読むたびに「違う」学びがある
サン=テグジュペリ 内藤濯 訳 岩波少年文庫 書籍情報
子どもの頃に読んだ本を、大学生になってから読み返す。今回のアンケートでは、そんな読書体験が何度も語られました。その代表が『星の王子さま』です。物語も言葉も変わっていないのに、読む側が成長すると、見えてくるものが変わります。
「昔はいいお話だとしか思っていなかったが、今は人生において何を大切にするかなど、とても考えさせられた」(2年・文系)
「子どもの頃には単純な物語として読んでいた言葉に、人間関係や幸福についての意味が込められていることに気付いた」(1年・理系)
幼い頃には不思議な旅物語に見えた場面が、再読すると、孤独、友情、責任、幸福についての問いとして迫ってきます。本は、一度読んで理解したら終わりではありません。自分が変わるたびに、同じ言葉が別の意味を帯びます。東大生の回答は、長く読み継がれる本の強さをよく表していました。


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