ここで提唱したいのが、「流域治水経営」という考え方だ。流域治水とは、河川の管理者だけでなく、流域全体の関係者が協働して水害リスクを減らす取り組みである。流域治水インフラを、平常時にも収益を生み、維持管理に還元する経営資産として扱う発想が求められている。
この「流域治水経営」を実現するには、解決すべき課題が大きく3点ある。第1に、いかにして収益を生み出せる場所や事業を特定するか。第2に、いかに防災機能と事業性を両立するか。第3に、いかに官民のトータルコストを削減するかだ。
1点目は、収益を生み出せる場所や事業を見極めることである。国土交通省は「RIVASITE(リバサイト)」という制度で全国約900の河川敷地で民間活用を推奨しているが、現時点で公表されている活用事例は兵庫県加古川市の1事例にとどまる。制度だけ整えても、事業として採算が見込めなければ、民間事業者は参入しにくい。重要なのは、どこで、どのような事業を行えば、どの程度の市場規模が期待できるか、を可視化することである。
水辺空間は一様ではない。都心近接型なら飲食やイベント、ナイトマーケットが向くかもしれない。郊外型ならキャンプ、音楽フェス、スポーツ大会が有望かもしれない。場所ごとの特性を、使用できる敷地の広さや駅・幹線道路からの距離、周辺人口等の情報を整理し定量化することで、可視化していくことが重要である。

技術革新が水辺収益化を後押し
2点目の「防災機能と事業性の両立」実現のカギになるのが、技術革新である。
そもそも河川敷や遊水地等の水辺空間は、災害時には水を流し・ためる場所である。そのため、水を流したりためたりする妨げとなる大規模な建築物を置くことに、河川管理者は難色を示しやすい。一方で収益性の高いイベントや集客施設を運営するには、大規模でリッチであることが求められがちである。
このジレンマを解決する糸口になるのは、簡単に設置・撤去できるリムーバブル(可動式)な施設や、平常時の収益モードから災害時の防災モードへ切り替えられるトランスフォーマブル(可変式)な施設といった、建築技術の進歩である。
この記事は有料会員限定です
残り 1775文字

