一斉授業のように黒板の前にいる時間は、ほとんどありません。板書した文字も10文字以内でした。おそらく、この授業を参観した方は驚かれたと思います。「先生が教えていない」ように見えるからです。
しかし実際は逆です。私はこの45分間、これまでのどの授業よりも「教えて」いました。全体に向けて話す時間を減らした分、一人ひとりに関わる時間が圧倒的に増えたのです。
誤解しないでいただきたいのは、AIに全てを任せるのではないということです。採点や評価といった、AIが得意なことはAIに任せる。そして、目の前の子どもを見取り、その子に応じた指導を行うという、人にしかできないことに私は集中する。この役割分担こそが、AIを取り入れた授業の姿だと考えています。
授業参観に来ていた保護者の反応は?
この授業を参観していた保護者の方と、短い時間ですが話をする機会があり、以下のような会話が交わされました。
保護者:とてもおもしろかったです。どうしてAIを取り入れようと思ったんですか。
樋口:一人ひとりの子どもを見ることには、限界があります。指導できる時間や機会も、あまりありません。この壁を超えたいと思ったんです。
保護者:あ〜、なるほど。たしかにそうですね。あれだけ真剣に取り組む姿を見て、嬉しく思いました。家庭学習にも使えそうです。
この会話から、私は2つのことを考えました。
1つ目は、保護者の方が最初に見ていたのは「AI」ではなく「わが子の姿」だったということです。「真剣に取り組む姿を見て、嬉しく思いました」という言葉が、それを物語っています。AIを取り入れることの是非を議論する前に、まず子どもの姿で語ること。これは、保護者にAI活用を説明するときの大切な視点だと感じました。
2つ目は、「家庭学習にも使えそう」という言葉です。学校の授業だけでなく、家庭での学びにも広がる可能性を、保護者の方自身が感じ取ってくださったのです。自分のタイミングで質問できる、過去の学年に戻って学び直せるというAI先生の強みは、家庭学習でこそ発揮されるのかもしれません。
学校と家庭の学びがつながっていく。そんな未来も見えてきた会話でした。


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