これらの答えを聞いてさらに疑問が募る。国や行政が助けてくれないと思うなら、なぜ助けてほしいと声を上げないのか。“構造の問題”があると感じているなら、どうしてその構造をつくり、維持する側の政府や政権与党を支持するのか。
ハジメさんの経験を振り返ると、問題は給料の差し押さえだけではない。工場派遣時代の低賃金にも、住居の喪失にも、背景には社会構造の問題がある。
工場(製造業)の派遣労働者の所得水準は、さまざまな福利厚生が付く直接雇用の期間工と比べ、低いことが多い。これは人件費を低く抑えたい経済界からの要望を受け、製造業を含む多くの業務で派遣を解禁してきた規制緩和政策と無縁ではない。
また、日本の住宅関連予算や公共、公営住宅供給の水準はOECD平均などに比べると、おしなべて低い。これにより、首都圏を中心とした賃貸物件の家賃はじわじわと上昇を続けている。
こうした労働、住宅政策は、少なからず格差の拡大や貧困の固定化を招いたのではないか。ハジメさんは長年、政権を担ってきた自民党に何を期待して投票するのか。私の中のモヤモヤは最後まで解消されなかった。
正社員になっても続く借金返済…
ハジメさんとの話は多くが平行線だった。しかし、取材時間はトータルで12時間を超えようとしていた。そろそろペンを置く潮時だろう。
給料を差し押さえられたあと、ハジメさんは、ホストに“復職”した。ホストの報酬は手渡しなので、差し押さえを逃れることができるからだ。その間に築60年近い家賃5万円のアパートに転居。すでに彼女とは別れていた。
さいわい正社員の仕事が見つかり、今は夜の仕事とは完全に離れているものの、家賃滞納時の裁判費用を含む借金は100万円ほど残っているという。
ホスト時代のツケを払い終えるには、まだしばらくかかりそうだ。


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