それにしても、ハジメさんはなぜホストになろうと思ったのか。
地方都市出身のハジメさんは両親のネグレクトなどにより、中学から高校までを児童養護施設で暮らす。高校卒業時はリーマンショックの直後だったが、「職種も勤務地も選ばなかったので、そこまで就職活動に苦労はしなかった」と言う。
ただ、初職の大手小売業は人間関係になじめず、半年ほどで辞めた。その後の数年間は工場の派遣労働者などとして働いたが、毎月の手取りは13万円ほどと高くはなかった。
借金はまたたく間に400万円に
20代半ば、「仕事には困らないはず」と首都圏に移り住み、板金加工の仕事に就く。正社員で、残業があるときは手取りで月20万円ほどになった。生活が安定しつつあったころ、付き合っていた女性と同棲を始める。その彼女に浪費癖があった。「趣味が旅行だったり、仕事帰りにタクシーを使ったり。水道代は4倍になりました」とハジメさんは言う。
クレジットカードのキャッシングなどで、借金はまたたく間に400万円に膨れ上がった。そこで「一気にお金を稼げる仕事」として、ホストへの転職を決めたのだという。
しかし、結果は住居喪失と保険料の未払いである。借金返済も進まず、消費者金融などと交渉して利息カットや返済プランの変更をしてもらう任意整理も経験した。それでもハジメさんは「(ホストになったことは)宝くじを買うよりは現実的な選択でした」と主張する。
もし私がハジメさんの親しい友人なら「ホストで借金を返すことは難しいのではないか」と忠告するだろう。一方で、職業を選ぶ自由は誰にでもあるともいえる。一番の問題は、いくら保険料の徴収とはいえ、ハジメさんがアパートを追われるまで追い込んだ行政の対応である。
このとき、ハジメさんが利用できる可能性があった公的支援としては、離職や廃業した人などに家賃相当額を支給する「住居確保給付金」や、コロナ禍で生活困窮した人に無利子・保証人不要で貸し付ける「緊急小口資金・総合支援資金」が考えられる。
また、東京都には生活支援や貸付相談などを行う「TOKYOチャレンジネット」という仕組みもあった。


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