8月上旬の集計で上位3機種がiPhoneで占められたことは、その設計が機能している一例でもある。読者が自分の買い替えを考えるとき、この違いは実務的に意味を持つ。アップルの5段階は「どれを選んでも同じ体験に着地する」前提で組まれた階段であり、サムスンやシャオミの品揃えは「用途ごとに違う端末を選ぶ」前提で広がっている。選び方の作法が、そもそも異なるのだ。
エンジニアがトップに立つ意味
そして26年9月1日、アップルの経営トップが15年ぶりに交代する。ティム・クックがエグゼクティブチェアマンに就き、ハードウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのジョン・ターナスがCEOになる。26年4月20日の発表で、取締役会の全会一致による決定とされた。
ターナスの経歴は、ラインナップを語るうえで示唆に富む。01年に製品デザインチームへ入社し、最初の仕事はApple Cinema Displayだった。13年にハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントへ昇格してAirPods、Mac、iPadを統括。20年にiPhoneのハードウェアが担当領域に加わり、21年にシニアバイスプレジデントへ。22年末にはApple Watchも受け持つようになった。MacをAppleシリコンへ移行させた取り組みでも中心的な役割を担っている。
つまり現在のアップルのハードウェア全カテゴリーを、実際に手を動かして作ってきた人物である。
iPhone Airもその部門の産物だ。バッテリーの持続時間を削ってでも薄さを取るという判断は、売り方から逆算した設計ではない。作れるものの限界を試した設計である。当初売れず、減産まで報じられても、アップルはこの方向性自体を撤回していない。
噂ではいよいよアップルからも折りたたみiPhoneが登場するとされている。仕様や時期は公式に確認できないため断定は避けるが、もし加わるとすれば、それはサムスンのように形状で選択肢を割る一手ではなく、価値軸をもう一本立てる一手として置かれるのではないか。iPhone Airで薄さに振ったのと同じ発想である。
売り方の名手と評されたクックの15年から、その製品を実際に作った側がトップに立つ体制へ移る。ラインナップの増やし方が「価格帯を埋める」方向ではなく「新しい価値軸を立てる」方向に寄っていくとすれば、その兆しはすでにiPhone Airという製品に現れている。8月上旬の集計でiPhone Airが首位に立ったのは値引きの力を借りた結果ではあるが、薄い端末を選んだ人がそれだけいたことも事実だ。9月からの体制は、次の答えを手にしている。


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