それに応じて技術を提供しようとしたのがグーグルですが、そうした軍事利用に対して社員たちから猛烈な反発が巻き起こり、結果的にグーグルはこの国防総省とのビジネスから撤退するという事件が起きたことがあります。
その頃までは、まだ「理念」の側に踏みとどまっていられたのですが、いまやAIも軍事に呑み込まれるのが避けられなくなってきている。民主的なAIを作りたいといった理念を維持できるのかどうか、難しい状況になってきています。
オープンAIも同じ轍を踏むのか
『Empire of AI』にも書かれているとおり、オープンAIは当初は非営利団体でした。人類全体の利益になるような、安全なAIの開発を指向していたからです。
とはいえ企業である以上、やはり資金が必要で、それを調達するためにマイクロソフトと組まなければいけないとなって、ちょっと変わった組織形態を作りました。
それは、非営利団体のオープンAIの下に株式会社のオープンAIをつくるというものです。しかし、そうしてもなお資金調達が非常に難しい。
高機能なLLM(大規模言語モデル)を作ろうとすると莫大なお金がかかるのに、その最上部に非営利団体があるということは、投資家にとっては大儲けできない。非営利団体は株を発行せず、株式譲渡ができないからです。
そして、非営利団体をやめて株式会社に移行するしかないと考えるサム・アルトマンと、AIの安全性を重視する幹部のイリヤ・サツケヴァーとが対立し、結果的に組織の分裂騒ぎが生じる。
本書を読むと、オープンAIでも、どこまで資金調達して開発を加速させるか、一方で、安全面からAIをどこまで進化させるのかという岐路に迫られていることが伝わってきます。
アルトマンの解任劇の後、サツケヴァーは会社を去り、残ったアルトマンは完全な営利企業化を果たしました。
いまでは、巨額の資金がオープンAIに流れ込んでいます。NVIDIAのGPU(画像処理装置)だけに頼るのもまずいと、自社AI専用のチップの設計に取り組んだりもしています。
それは不可避の流れかもしれませんが、そうしてお金儲けに邁進することで、かつてのグーグルやフェイスブックと同じ道をたどるのではないかという危機感が出てきている。
いま、どちらに傾くかがわからないところで、みんなが固唾をのんで見守っている状況ではないでしょうか。


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