生物学的に老衰の本質を一口で言えば、“予備能の枯渇”です。
臓器はいずれも、日常の必要量をはるかに上回る能力(予備能)を持って設計されており、加齢はこの能力を少しずつ削り取っていきます。そしてある日、肺炎や転倒でもなく、ごくささやかな負荷、たとえば風邪をひく……などのちょっとしたダメージが、もはや吸収されずに全身の恒常性を崩します。
これが生物学的に見た老衰です。
分子レベルの老化については、2023年に『Cell』誌に掲載された「老化の特徴」が最も整理されていてわかりやすいでしょう。

細胞老化・慢性炎症と老衰の関係
この12項目のなかでとりわけ重要なのが、細胞老化と慢性炎症の関係です。
近年、分裂が止まり、本来の機能を十分に果たせなくないまま体内に残っている細胞のことを「老化細胞」と呼んでいます。
老化細胞は、炎症を起こすようシグナルを撒き散らします。これによって起こる慢性的で微弱な炎症は「インフラメイジング=炎症老化」と呼ばれ、動脈硬化やサルコペニア、認知機能低下、フレイルなど、加齢に伴うほぼすべての病態の土壌となっています。


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