なぜ辞めていないのか、を気にかけるべき
──多くの企業が、退職者へのヒアリングを行っています。
退職理由を聞くことが無意味とまでは言わない。だが、そこには大きな見落としがあると思う。社員の退職につながった要因について丁寧に確認し、それを自社から取り除いたとしても、定着率が劇的に上がることは多くない。
理由はいくつかあるが、1つは、退職者の語りが周囲の納得を得るために練られたものだということだ。「家族の都合で」「転勤できないので」「上司や同僚と合わなくて」などは、「それなら仕方ないか」という反応を引き出す。立つ鳥跡を濁さずの文化もあって、「環境を変えて成長したい」のような言葉も選ばれやすい。
もう1つ、退職理由はあくまで去っていく人による評価だ。
大多数の社員にとって問題にならないことが、誰かの退職につながるケースはある。だが、「その要因をなくそう」という善意の取り組みは、自社の競争力や職場の魅力をかえって損なうかもしれない。
極端な例だが、外資系コンサルなど「アップ・オア・アウト」の厳しい社内競争下でスキルを磨きたい社員は、勤務先が突然「ゆるい職場」へ転換されれば辞めてしまうだろう。企業には変えてはいけない部分があるのだ。よって退職理由に着目するアプローチを続けるなら、自社の制度や風土に欠陥があるのか、辞めた社員との間に残念なミスマッチがあったのか、精査が必要となる。が、なぜ辞めた理由ばかり丁寧に聞くのか。
私としては、「それよりも、今会社で、粛々と黙々と頑張っている社員がなぜ辞めていないのか、を気にかけるべきじゃないですか」と言いたい。働き方改革が進み、多くの企業で職場環境や制度が整ってきた今では、特にそう思う。
──退職者に時間を使うより、今会社にいる社員の話を聞くと。
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