国鉄民営化後に発足したJR西日本は、改造車だけなく新型車両にもシール対応を行うこととなった。その場合、関西工機整備がシールを納めるのはJRではなく、車両メーカーである。ということは車両メーカーが取引先となり、必然的にその車両メーカーが手がけるほかの鉄道会社の新型車両向けにもシール展開が行えることになった。
SOSボタン、非常用ドアコック、優先座席、禁煙マーク……。列車内には多くの案内サインが貼られている。少しでも見やすくするため、各社がデザインを競い合う。その中で、関西工機整備の強みはJR系であり、鉄道会社のニーズを把握していることにある。
車内の案内サインだけでなく、車両外観のラインやエンブレムなども得意分野だ。JR西日本でいえば、特急「サンダーバード」に使われる683系のラインや寝台特急「サンライズ」285系のエンブレムなどだ。
コロナ禍契機に「グッズ製作」
2020年に始まった新型コロナの感染拡大の影響でJR西日本の鉄道事業売上高が急減したことで、メンテナンス事業が打撃を受けた。新たな事業を育てる必要がある。そこで会社が着目したのが、鉄道ファン向けのグッズ製作である。それまでも既存デザインによるヘッドマークのレプリカなどを制作していたが、2021年、JR西日本から大森正樹氏が取締役印刷事業部長として同社に出向すると、オリジナル商品が次々と生まれた。
大森氏は1989年にJR西日本に入社後、鉄道設計技士として数多くの車両の設計に携わってきた。それだけではない。車両設計の傍ら、サインや路線図のデザインも手がけた。大森氏の出身校である千葉大学工学部工業意匠科(現・総合工学科デザインコース)は、漫画家のやなせたかし氏も学んだ東京高等工芸学校図案科を前身とし、多数の工業デザイナーを輩出している名門である。
卒業制作で東京23区のバス路線のトータルデザインを制作した大森氏は、公共交通のデザインをやりたいという理由から鉄道会社を志した。

