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遭難したら「沢に下りるな」が常識…なのに沢に下りたくなるのはなぜ? 道迷い遭難は"心の弱さ"が関係していた

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昇仙峡の上流、巨岩累々の野猿谷の渓流釣り
山で道に迷うとなぜ沢を目指してしまうのでしょう?(写真:Milvus/PIXTA)
  • 羽根田 治 フリーライター/長野県山岳遭難防止アドバイザー

INDEX

「山で道に迷ったら、元の場所まで引き返すこと。決して沢に下りてはいけない」と言われています。ところが実際には、道に迷うと沢に下りてしまう人が多いのです。
新刊『低山遭難 「まさかの遭難」から生きて帰った人たち』を上梓した羽根田 治氏が、山岳遭難の原因の3割を占める「道迷い遭難」から生きて帰るための心構えを解説します。

遭難の原因の30%を占める「道迷い」

山岳遭難事故の要因の中で最も多いのが道迷いである。

警察庁の統計によると、2025年には3122件の遭難事故が起こり、遭難者数は3623人にのぼった。

このうち道迷いによる遭難者数は全体の30.9%を占める1119人。次いで転倒の694人(19.2%)、滑落の626人(17.3%)、疲労の356人(9.8%)、病気の294人(8.1%)という順になっている。

『低山遭難: 「まさかの遭難」から生きて帰った人たち』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

道迷い遭難とは、行動中に正しいルートを外れ、誤った方向に迷い込んでいって元に戻れなくなり、にっちもさっちもいかなくなって助けを求めるというもの。

たいていの場合、正しいルートを外れると道が次第に不明瞭になってきたり、急斜面ややぶの中に導かれていったりするので、遅かれ早かれ「あれ、おかしいな。この道でいいのかな」と不審に思うのだが、そのままずるずると先に進んでいって深みにはまり込んでしまうというのが典型的なパターンだ。

「道に迷ったら引き返せ」というのは登山の鉄則のひとつであり、「おかしいな」と感じた時点で引き返していれば、さほど苦労することなく正しいルートに戻ることができる。

しかし、この「引き返す」ということがなかなかできない。

「もうちょっと様子を見てみよう」「たぶん間違っていないだろう」などと都合よく考えて、そのまま先に進んでいってしまう。

これは、さまざまな認知バイアス(人間が無意識的に潜在させている思考の偏りや歪み)が作用するからだ。

例えば、自分に都合のいい情報だけを選択して思い込みを強化する「確証バイアス」、ある程度までの異常を異常と感じない「正常性バイアス」、物事を楽観的に捉える「楽観主義バイアス」など。

さらに根拠もなく「どうにかなるだろう」と考えて決断を先延ばしにする心理、それまでかけてきた労力を無駄にしないために「今さら引き返すのも面倒だ」と考えてしまう心理なども働くため、なおさら引き返すことができなくなってしまう。

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