道に迷ったときにいちばんやってはいけないのは、沢を下ること。
心理的には登っていくよりは下りたくなるものだし、沢には立木ややぶがほとんどなく歩きやすいうえ、道があるように見える。
このため、道に迷った人の多くは沢に誘導されて下っていってしまうが、下っていくうちに必ず崖や滝に突き当たる。そこを無理矢理下ろうとして、転滑落するという事故が少なからず起きている。
その結果、重傷を負って行動不能となり、数日後に息絶えたという悲惨なケースも散見される。「迷ったら沢を下ってはならない」といわれるのは、このことによる。
どうしても自力で脱出できない場合は、救助を要請するしかない。携帯電話がつながるところから110番か119番に通報し、転滑落や落石などの危険がなく、風雨がしのげる場所を探して、その場で救助を待つことだ。
このとき、ツエルトやエマージェンシーシートがあれば、体を保温でき、体力の消耗を最小限に抑えることができる。
登山地図アプリは登山前の準備が肝心
なお、登山のナビゲーションツールとしては、地図とコンパスよりも、今は登山地図アプリを活用している人のほうが多そうだ。
地図アプリは、電波が届かないところでも現在地が一目瞭然なので、ルートを外れてもすぐに間違えたことに気がつくし、完全に道に迷ってしまっても、現在地がわかるので容易に正しいルートに戻ることができる。
極端な話、地図アプリがあれば、道迷い遭難はほぼ防げるものと思っていい。
ただし、それもアプリを使いこなせればの話だ。例えばスマホにアプリをダウンロードしただけではダメで、事前に地図データをアプリ内に保存しておく必要がある。
それを知らない人も意外に多く、山に行ってからアプリを立ち上げても地図が表示されないので焦った、なんて話もよく耳にする。
それでは持っていてもなんの役にも立たないので、基本的な使い方はしっかりマスターしておきたい。
また、バッテリー切れに備えるモバイルバッテリーは必携。さらに、万一スマートフォンが故障してしまったときのために、紙の地図とコンパスも併せて持とう。
なお、冒頭で触れたとおり、山岳遭難事故の要因は道迷いが長らく最多となっているが、その割合は年々減りつつある。
これは、登山地図アプリを使いこなせる登山者が徐々に増えてきている影響だと思われる。

