このように、道迷いは人の心の弱さに起因するものなので、いくら体力や技術、知識を身に付けようと、どうしても防ぎきれない部分がある。
その点が、油断や不注意などによって引き起こされる転倒や転滑落などとは、大きく異なるところだろう。
道迷い遭難を防ぐにはどうしたらいいか
では、道迷い遭難を防ぐにはどうしたらいいのかというと、道に迷わないように行動することである。
「答えになってないよ」と思われるかもしれないが、山で完全に道に迷ってしまったら——つまり自分がどこにいるのか、どの方向に進めばいいのかまったくわからなくなってしまったら——そこから脱出するのは非常に難しい。
かつては「地図とコンパスを使って現在地を割り出して、正しいルートに戻れ」などと言われていたが、そのためには一定の条件が整っている必要があり、そうたやすくできることではない。
そもそも地図とコンパスは、道に迷ったときに使うものではなく、道に迷わないようにするためのツールである。
山では、この地図とコンパスを使って、こまめに現在地を確認しながら行動すれば、道に迷いにくくなる。
とくに低山の場合、北アルプスや八ヶ岳などの人気エリアとは違って、登山道や道標の整備状況が十分とは言えない山やコースも多い。
場所によっては登山道だけではなく、作業道や仕事道、シカやイノシシなどの獣道も入り組んでいる。
林業関係者や鉄塔管理者らが、自分たちの作業の目印として付ける赤テープや杭などを、登山道の目印だと誤認してしまう人も少なくない。
漫然と歩いていると、それらに気づかずいつの間にかルートを外れ、誤った方向に迷い込んでいってしまう。
しかし、こまめに現在地をチェックしていれば、万一、登山道を外れたとしても、間もなく間違えたことに気づくはずだから、すぐに正しいルートに戻ることができる。
もし完全に道に迷ってしまったら、その場で休憩をとり、行動食を食べたり、水分を補給したりするなどして、冷静になることが大事だ。
正しいルートを探そうとして、焦ってやみくもに動き回ると、いたずらに体力を消耗してしまうばかりか、ますますワケがわからなくなってしまう。
落ち着きを取り戻したら、ピークや尾根など高いほうを目指して登り返していく。
ピークや尾根には登山道が付けられていることが多いし、周囲の展望も開けるので、地図と見比べることで現在地を判別しやすくなる。また、携帯電話の電波もつながりやすい。

