天才的な頭脳をもったがゆえなのか、好きな人への愛情表現が度を越していく。石神のこういうところが『告白』の爽太にも共通するように思えるのだ。言ってしまえば、愛と執着の葛藤、社会規範を凌駕するほどの愛の物語には普遍性があるということだろう。
松村北斗が演じる役を「気持ち悪い」と言っていいのか悩む
また、『告白』の強みは、愛と罪とに引き裂かれそうな人物に扮する松村北斗の演技である。なぜ爽太を「気持ち悪い」「ストーカー」と言葉にすることに躊躇があるのか。それは演じているのが松村だからである。
SixTONESに所属するアイドルであり、俳優としても、第49回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞をはじめとして数々の映画賞を受賞している実力派。その松村が演じる役を「気持ち悪い」などと言っていいのかとひとしきり悩むのだ。
松村北斗の演技は興味深い。この手のクセのある役を演じる場合、重厚な演技になることが多い。ところが、彼は違う。逆に極めてさらりと演じているように見える。
長年、たくさんの俳優の演技を見てきて、18人の俳優の現場を見て書いた『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』や蜷川幸雄の演出を受けた10人の俳優のインタビュー集『蜷川幸雄の稽古場から』などを上梓している筆者だが、松村ほど自意識が感じられない俳優は見たことがない。もちろんこれはいい意味だ。俳優は、そう見せないようにと思いながらも、演じています、いい演技をしています、というような意識やプランニングが少しは漏れ出てしまうものだ。それが松村には一切感じられない。
例えば『告白』にはちょっとヘンな動きをする人物が出てくる。爽太を「気持ち悪い」と言い放ったサユリが雇ったスパイのような存在の、社長秘書・瀬戸(古舘佑太郎)は奇妙な動きやしゃべり方をしている。通常の気持ち悪いキャラとはこういう人だという見本のようだ。


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