一方で、別荘オーナーは、口を揃えて「不便だよね」と冗談まじりに言うそうだ。コンビニもない。飲食店もスーパーもない。スマホの電波が圏外の場所もある。お酒を買い忘れた、充電器を忘れたとなってもすぐには手に入らない。
「本当に何もないんです。ですが、そういった不便さもひっくるめて楽しまれているように感じます。別荘とは非日常を楽しむものなので。何もないからこそ、本当の豊かさがあるとも思っています」(高野さん)
鴻島は、いまでは約350軒の別荘のほとんどが埋まっている人気のリゾート地だ。空き家はほぼない。
だが、高野さんが初めて訪れた2008年の鴻島は、手付かずの廃屋があちこちに佇む「バブルに取り残された島」だったという。
「荒れている割に、いい家が多い」
三和開発コンサルタントの創業は2004年。大阪を拠点に、滋賀県や和歌山県など関西圏の田舎暮らしや、リゾート物件の不動産会社として高野さんが立ち上げた。そして、経営も軌道に乗ってきた2008年、琵琶湖の物件で縁のあった客から、鴻島の別荘を紹介された。
バブル期に鴻島を手がけた不動産屋は、バブル崩壊と共に軒並み倒産。船に乗らないと行けない離島の物件は、どこの不動産屋からも敬遠される。もう使わなくなった別荘を、所有者は売りたくても売れない。手入れされない空き家だけが島に取り残される。それが当時の鴻島の状態だった。
高野さんの事業の対象エリアは、もともと関西圏だ。鴻島はエリア外であったが、「これも、ご縁だ」と1度見に行くことにした。大阪から岡山に移動してフェリーに乗り、鴻島に到着した。
「荒れている」
それが、高野さんの鴻島に対する第一印象だ。だが同時に、これまでに数々の別荘地を扱ってきた不動産屋としての直感もあった。
「よく見れば、荒れている割にすごくいい家が多い。日本のエーゲ海と言われるほどの絶景があるのにもったいない。ちゃんとテコ入れすれば、絶対に流通する」


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