イランに「息をつく余裕」を与えてしまった
――まず、戦闘終結をめぐるアメリカとイランとの覚書が破綻した理由を教えてください。
主因は、イラン側の交渉者たち、つまり、文民政府の上層部が、イスラム革命防衛隊(IRGC)に対して実質的な権限を持っていないことだ。IRGCは、ホルムズ海峡を管轄する海軍など、主要な軍事戦力を掌握している。
3~4月に行われたアメリカの攻撃により、イランでは政府機能の多くが破壊された。外相などの文民指導者らにはIRGCを統制する力がない。
――覚書は、ホルムズ海峡の開放やイランの核兵器製造放棄など、14項目から成っていますが、イランに有利だと言われています。
イランにとって非常に有利な内容だ。例えば、ホルムズ海峡は、いかなる国によっても支配されるべきではない「国際海峡」だが、覚書はイランの支配を追認しているかのように見える。
トランプ大統領が覚書をたたき台にして交渉した最大の理由は、11月に中間選挙を控え、アメリカ内でのガソリン価格高騰を案じていたからだ。
覚書に基づき、(第1次トランプ政権が2018年に再開させたイラン産原油の禁輸という制裁を一時的に免除することで)イランと湾岸諸国から原油の輸出を増やすことができれば、世界の原油価格が下がり、アメリカの消費者価格も低下すると考えたのだろう。
だが、結果的に、それがイランに「息をつく余裕」を与えてしまった。原油の輸出を一時的に再開することで、イランは何十億ドルもの収益を上げられる立場にあったからだ。
イランに有利な点は、ほかにもある。核兵器開発問題だ。(覚書では核兵器製造の放棄が定められているとはいえ)同問題の交渉が先送りされる一方で、核兵器製造疑惑への制裁は科されないまま、時間が過ぎていった。これは、イランにとって「勝利」を意味する。
イランがトランプ大統領に仕掛けた心理戦
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