父親と娘。悠久の歳月、禁じられた関係がもっとも頻繁に発生した仲である。だから可妊期に近くなればなるほど女子大生たちは自分でも気づかぬうちに父親と距離を置く。
可妊期には通話の頻度と時間を徐々に減らし、その時期が過ぎるとまたいつものパターンに戻っていく。
可妊期に近づくと父親を警戒せよという警告システムが遺伝子にプログラミングされているのだ。
もちろん、自分も知らない、無意識に自動化された現象だ。
キブツに見る「愛の化学ホルモン」の不発
近親関係を防ぐ、まず最初の段階は、相手との血縁関係の有無を把握することだ。
人間はどういう手がかりからこうした判断を下すのだろう?
学者たちによれば、単純でありながらも強力な手がかりは、幼少期に誰かと一緒に過ごした時間の量である(Lieberman, Tooby & Cosmides, 2003)。
生まれたときから誰よりも多くの時間をともにしたのは、きょうだいだからだ。
もちろん「幼少のころに長い時間を一緒に過ごしたきょうだい」という単純な公式が常に当てはまるとはかぎらない。
たとえば、イスラエルのキブツ(イスラエルの農業を中心とした共同体のしくみ)集団では、きょうだいではない男女が幼いころから一緒に生活する。
興味深いのは、彼らのうち成人になって結婚するケースはほぼまれであるということ。
なぜだろうか?
キブツ出身のAさんとBさんは、互いにきょうだいではないとわかっている。しかし、AさんとBさんの脳には、「お前たちは子どものころあまりにもたくさんの時間を一緒に過ごした……あやしい」という警戒信号がつく。
そこで成人になると互いへの性的魅力が抑制される。頭では血縁関係ではないとわかっているのに、愛の化学ホルモンはなかなか出てこない。


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