また社内システムの一部に利用制限が発生したとみられるが、その企業が提供しているサービスそのものの中断は発生していなかったと推測されるものを「軽微」、被害が情報漏洩のみや軽微な調査のみで完了したと推測されるものは「なし」に分類した。この「なし」と「軽微」の合計が47%であった。

「重大」に分類された報告書を分析すると傾向が見えてくる。基幹システム、受発注業務、配送業務に関わるシステムや、グループ内の共通IT基盤がある場合に、これらに該当するシステムがランサムウェア被害に遭うと業務への影響が大きくなる傾向にある。
再発防止策としてEDR導入が挙げられることが多いが、業務影響を最小化する視点で考えた場合に、個々のパソコンの監視を強化するよりは、業務影響の多いサーバー側の事業継続性を高める対策を優先するべきだろう。
変化する攻撃側の主役、新興グループ“The Gentlemen”の台頭
次に日本企業を攻撃したランサムウェア攻撃グループの攻撃件数を見てみよう。昨年アサヒグループを攻撃したことで有名になったQilinは2位であり、現在猛威を振るっているのは新興グループの“The Gentlemen”である。なお、全世界ではQilinが1位であり、2位が“The Gentlemen”である。

eCrime.chの情報によれば、The Gentlemenが最初に観測されたのは25年9月10日。1年も経過していない状況でQilinに次ぐ活動量を見せており、現在注目を集めている攻撃グループだ。
The GentlemenはWindows環境を標的にしており、Windows Defenderの無効化機能を保有している。そして、The Gentlemenの最も特徴的でユニークな機能が「自己増殖機能」を持っている点だ。
この「自己増殖機能」によって、The Gentlemenは企業内に潜入しどれか1台の端末への感染に成功すると、そこを起点として到達可能なIT機器を探索し、自動的に感染を拡大させていく。
これまで日本企業に対して「自己増殖機能」が有効に動作したかはわからないが、日本企業でThe Gentlemenの被害に遭った12社のうち、業務影響区分で重大が3社、一部停止が5社に分類される結果となった。
今年上半期を振り返ってみると、ニュースではAIに関する話題であふれており、ランサムウェア被害が減ったかのような印象を持たれるかもしれないが、減少の兆しは見えず、むしろ攻撃頻度は増加傾向にある。
そして、ランサムウェアの分野で注目を集めているのは、自律型ランサムウェア 「JADEPUFFER」(ジェイドパファー)の登場である。JADEPUFFERは人間のオペレーターを介さずにLLM(大規模言語モデル)によって最初から最後まで実行される、Agentic threat actor(ATA)として初めて分類されたランサムウェアである。

